小説

□悪い夢
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「銀…時…俺は、あいつらの…ことが、忘れられずに…それで、仇を…」

こいつの声が、酷く懐かしい。

「けど…失敗だ…ここで死ぬのか…捕まるか…俺は無力だ…」

片眼から、一筋の涙が溢れる。

あの光景が、忘れられない。

見せしめにされた首。

変わり果てた、仲間の姿。

数日前、笑っていたじゃねえか…。


「夢を、見ていたと思え」

銀時が涙をすくう。

「お前はここで死ぬ。死ななくても病人だ、近いうちに死ぬだろ…」

一瞬、顔に影をつくったがすぐに向き直る。

「でも、これは悪い夢だ。お前はきっと生まれ変わる。生まれ変わったら、絶対に幸せになる。絶対だ」

「馬鹿じゃ…ねえのか…?生まれ変わっても、前世が、こうなら…不幸に決まって…」

銀時が俺の体を持ち上げた。

嗚呼、暖かい…。

「そうだ、俺は馬鹿だ。でも、仲間を思いすぎてこんな事したお前こそ馬鹿だ。お前の想い、ちゃんと神様にもとどくだろ」

心地の良い声と日差しに俺は目を閉じた。

「目ェ開けろ、綺麗だ」

最後に見た景色は、とても綺麗で…

「生まれ…変わっても、一緒だよな…」

「ああ、約束だ」



『総督!』


誰かが俺の頭を撫でた。

『「今までよく頑張ったな」』
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