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□とあるマジバの店員A
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「ありがとうございましたー。
またのお越しをお待ちしております。」


にこりと笑顔を浮かべて
言葉を紡ぎ一礼をして、
お客さんが店からでた瞬間に
顔を上げ真顔に戻る。
あー、、つかれた。
今日の労働時間あとどのくらいだろうか。
時計の針をみて、肩を下ろす。





とあるマジバの店員A




高校卒業後、
地方から越してきて、
なんやかんやで、1年が過ぎ
2年目に突入した。
午前中は、大学で講義を受けて
はやく上がれる日は、
マジバでバイトをする女子大生である。
マジバでのバイト歴も、
1年立ち、今では結城リーダー
と呼ばれるまでになった。
いや、リーダーって、
そんな上な位って訳じゃなくて
ただ、学生の中で
わりとバイトに入る頻度が
多い私についたあだ名だ。
え、なにこれ、
華の女子大生なのに、切なすぎ。


「香奈ちゃん、
ポテト揚げよろしく!!」


店長に叫ばれて、
はーいと返事をして
フロアからキッチンに回って
ポテトの袋をがさごそと
冷凍庫から取り出して
油の中へと投入する。
パチパチと油がはねるのを
目を細めながらみる。
タイマーをセットして
ポテトの揚がる経過を
ぽーっとみつめる。
そうしたら、バタバタと
バイトの後輩ちゃんが
こちらに駆け込んできた。


「結城リーダー!!
あの、いつものガングロの男の子が
香奈いないのか?って、
来てるんですけど。」



「結城は、いませんって言って。」


後輩ちゃんの言葉に
思わずそういったが、
後輩ちゃんが、明らかに
迷惑そうな顔をしてくるので、
仕方なくポテトを後輩ちゃんに
任せて、私はレジへと向かった。
私がレジにひょこっと
顔を出すと、ガングロくんがいた。


「やっぱ、いるじゃねぇか。
分かりやすいとこにいろよなー、
香奈。」



「あのさ、ガングロくん。
私、一応、大学生で、先輩
なんだけど。」


私のことを香奈と
呼び捨てにする彼にそういえば、


「今、俺客だし。
つーか、ガングロくんじゃねぇ!!
青峰大輝だ!!」


バイトリーダーの私。
1年も働いてるだけあって
私の顔を覚えてくれて
よく来てくれる常連さんがいる。
その中でも、
最近頻繁に来てくれるのが、
ガングロくんだ。
ん?なんで、ガングロくんが、
私の下の名前を知っていて、
なおかつ話しかけてくるのかって?
私がバイト中に、
丁度ガングロくんが、
マジバにきて、大量にハンバーガーを
買ってくれた日があって、
(たしか、10個ほど。)
あー、あんなにハンバーガー
食べるのかーと、
テーブルを拭きながら
横目でみていた。
その時に、ガングロくんが、
手を滑らせたのか、
ハンバーガーを床に落とし
それに伴い、飲み物も
ぶちまけ、その、飲み物が、
テーブルの上に乗っていた
ハンバーガーに降りかかって、
奇跡的に飲み物が掛からなかった
1個を除いて他の全てのものが
あまり、美味しくないものへと、
変身してしまったのである。
その様子をみていた私は
まだ、一口も食べていなかったのに、
あまりにも可哀想になって、
店長には内緒でサッとキッチンに入り
ガングロくんがたのんだ、飲み物と
ハンバーガー10個をトレーにのせて、
彼に近づき声を掛けた。
こちらを振り返った彼の顔を見て
あまりにも顔面が怖すぎて
固まったものの、
そっとキッチンから持ってきたものを
テーブルの上に置いた。


「お客様、よろしかったら
こちらをどうぞ。」

そう言って、新しい品物と
ガングロくんがぶちまけて
ダメにしてしまったものを
取り替えようとすると
腕をつかまれた。
顔を見れば、眉間にしわが
よっているし、こ、怖すぎる。
チキンな私は内心冷や汗をかいた。


「俺、もう、金持ってねえから
新しいのいらねぇ。」


そう言って、新しく持ってきた
ハンバーガーと飲み物を
突き返された。
あぁ、そういうことか。
お金を取られると
彼は思っているとゆーわけか。
え、私、そんなお金とりそうに
みえるのか?つらい。
そんなことを考えながら
さっと、新しいものを彼の
目の前においた。


「大丈夫ですよ。
新しくお金は頂きませんので。
今回は特別です。
あ、品物を変えたってのは、
内緒ですからね。」



ちゃんと口止めも忘れずに
言ってから、ガングロくんのもとを去る。

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