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□とあるマジバの店員A その2
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「香奈さん。」


椅子に座りながら、
私の名前を呼ぶ彼。


「香奈さーん。
俺、自分に興味あんねん。
やから、俺にも構ってやー。」



「私は興味ないねん。」


彼の関西弁を真似して
そう言ってやれば、
驚いた顔をしてから、
香奈さん、ほんま、
ええなぁ。と言われた。
何が良いのかさっぱりわからない。





とあるマジバの店員A その2




椅子に座りながら
こちらに話しかけてくる彼。
今吉くんといって、
桐皇学園高校の3年生。
青峰くんや、良くんの先輩らしい。
あの日を境に、
常連さんが増えた。
青峰くんや、良くん繋がりの
桐皇の高校生達。
あの日、7時にバイトを上がって
私を待っていてくれていたらしく、
青峰くんと一緒に家路についた。
その時に、
「今吉サンには、気をつけろよ。
あの人、妖怪サトリだから。
近づくんじゃねぇよ。わかったな。」
と、ドスをきいた声で
散々言われたけど、
青峰くん、あなたの先輩、
最近、マジバの出現率が
高い気がするんですけど。
私の気のせいでしょうか。
決まって、今吉くんが現れるのは
青峰くんがいない時間帯や日にちであるため、
青峰くんは、今吉くんが
常連さんになっていることは、
知りもしない。


「なぁ、香奈さん。
今日はいつ終わるん?」


「んー。いつかー。」


「青峰には、
この前終わる時間教えてたんやろー?
俺にも教えてやー。」


目を細めてそう言う今吉くん。
今吉くんの視線を感じながらも
レジの方へとそそくさと逃げる。


「香奈ちゃん。
え?なになに?
なんかさー、最近、青春してるよねー。」


レジに戻れば、
店長に腕でツンツンと突かれた。


「何言ってるんですか。
店長。メガネ割りますよ。」


「香奈ちゃん、、。
バイオレンス。」


店長が泣き真似をしていたけど、
知ったこっちゃない。
青春?どこが?
どこをどうみてそうなったのか、
教えて欲しい。


「結城リーダーですか?
結城リーダーは、8時あがりですよ。」


「おおきに。お姉さん。
助かったわぁ。
香奈さん、教えてくれへんから。」


気付くと、後輩ちゃんが
顔を染めながら今吉くんと喋ってるのが聞こえた。


「香奈さん、
8時おわりなら、俺、
そこで勉強してます。」


あともう少しでしょと言って
テーブルに戻っていく今吉くん。


「ほら、香奈ちゃん。
青春してるじゃん。」


ドヤ顔でそう言ってくる店長。
とりあえず、店長、殴っていいですか?


「いいなー。結城リーダー。
あのメガネの人、かっこいいじゃないですかぁ。
色気があって。背も高くて。」

顔を染めながら、
後輩ちゃんがそう言ってくる。


「あのさ、俺もメガネだよ。」


「あぁ、素材が違うんで。」

バッサリと店長に言い捨てる後輩ちゃんが
面白すぎてつい吹き出す。



定刻になったので、
ロッカーで私服に着替えて、
従業員出口から外に出れば、
今吉くんが待っていた。


「外に出てて、正解だったわ。
香奈さん、
俺に声かけずに帰ろうとしてたでしょ?」


さすが、妖怪サトリ。
ギクリと方を揺らす。


「そ、そんなことないよー。」


視線を感じて隣を見れば
今吉くんがこちらを
ガン見してるもんだから
慌てて逸らした。


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