青春賛歌

□悪い癖
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「沢村く〜ん?足下がってるよ〜」

「ぐぐっ…」


ネットに向かって投球を続けている沢村は、隣に立つ晃の指摘に悔しそうに顔を顰める。


「晃さん!」

「何〜?」

「ネットにじゃなくてキャッチャーに受けてもらいたいんですけど!」

「そう言われても、クリス先輩に今日の沢村の相手に任命されたのはネットくんです」


ね〜?とネットに向かって同意を求める晃に、沢村はぐぬぬと体を震わせる。


「ク リ ス 先 輩 に、言われたんでしょ〜?」


その名前を出せば沢村が口答え出来ない事を知っての発言。


「どうだ、お前達」

「師匠!」

「クリス先輩、おかえりなさ〜い。文句言いながらも頑張ってましたよ〜」

「一言余計だ!」

「事実でしょうが。クリス先輩、沢村が怖いです〜」

「あ!クリス先輩に隠れるな!そして抱き着くな!」

「沢村の許可を取る意味が分からない」

クリスの背中に抱き付いてイーッと子供のような態度を見せる晃に、沢村も一層ムキになる。


「離れろ!」

「ってか俺先輩!敬え!崇め奉れ!」

「学年は一緒じゃねえか!」

「年は一つ上だボケ‼︎さあ膝間づけ!」

「何でだよ!」

「人生の先輩だからだよ!」

「はあ⁉︎」

「そこまでだ」


上から降ってきたクリスの声にピタリと2人の言い争いが止まる。


「沢村はネットに向かって投球を続けろ」


クリスの言葉には逆らえず、渋々練習に戻って行く沢村に対し、晃は抱き付いたまま。


「面白いですね〜、沢村」

「あまりからかうなよ?」

「いやぁ、イジると良く響くから面白くて」


気に入ったモノをいじり倒すという一歩間違えば嫌われかねない悪癖を持つ後輩に、クリスは溜息を吐きながら自分に抱き付いたままの髪を吸いてやる。


「楢橋はマネージャーの仕事に戻ってくれ」
「はーい」



悪い癖




(沢村、頑張れよ〜)
(棒読み!)
(楢橋…)

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