連載補欠

□02
1ページ/1ページ



「真崎先輩!」

「沢村くん、今日も元気だね」

「はい!」


雄大のスイッチが入るのは練習の最中や試合で守備やバッターボックスに入った時。
それ以外の練習前後や休憩中や順番待ちの時はオフになる。
入部当初は伊佐敷が0か100じゃなくて中間は無いのか!と怒鳴ったものだが、中間なんて出来るものならやっていると言葉にせずともシュンと頭を下げて落ち込んだ雄大に、伊佐敷の頭に亮介のチョップが炸裂した。


「そう言えば、テスト赤点だったんだって?」

「な、何でそれを⁉︎」


自分とは対照的なおっとりとした性格と話し方の雄大に沢村はとても懐いていた。
「プレー中はカッコいい兄ちゃんって感じで、普段は弟みたいなんです」と言った沢村に面と向かって言われた雄大は苦笑いしたものの、真っ直ぐで一生懸命な沢村を気に入ったようで校内で見掛けると声を掛けるようになった。
まぁ、それより先に沢村が遠くにいる雄大を見つけて飼い主に寄ってくる犬のように走り寄って来るのだが…。


「再テスト頑張ってね?」

「頑張ります!部活の時間死守のために!」

「うん、頑張れ」

「あ!真崎先輩!勉強教えてくれませんか⁉︎」

「俺が?」

「はい!」

「良いけど…、俺で良いの?御幸くんや渡辺くんの方が成績良いよ?」


教える事の下手さも自覚しての言葉だったが、沢村は首が取れるんじゃないかという勢いで首を振った。


「御幸一也に教えて貰うなんて絶対嫌です‼︎」

「そ、そう…」

「今夜からお願いしやす!」

「う、うん」

「真崎先輩」

「降谷くん?」

「僕も教えてください、勉強」

「あ!俺が約束したんだぞ!降谷!」


そう言えば降谷も赤点再テストだったな、と沢村と降谷の言い争いを聞きながら思い出す。
放課後に行われる再テストは合格点に達するまで続けなければならず、つまり部活の時間が減る。
大事な戦力となっている投手2人揃っての赤点に、伊佐敷の檄が飛んだのは記憶に新しい。


「担当教諭が違うテストと違って再テストの問題は皆んな一緒だから、2人一緒に勉強すれば分からない事は教えあえるし捗るんじゃない?」


恐らくこの2人は勉強は不得手で、赤点を貰った当初は多少なりともショックを受けるが、少し経てばケロっと忘れるタイプだ。
その2人が部活が絡むとこんなに真剣になるという事に雄大は微笑ましくなり目を細めた。


「場所はどこにしようか?広いから食堂にする?」

「ぜってー先輩達がからかいに来るから嫌です!」

「えっと、じゃあ俺の部屋にする?」


その申し出に沢村と降谷はすぐさま首を縦に振った。
しかし、2人は失念していたのだ。
雄大の同室が御幸であるという事を。
降谷は先輩に勉強を教えて貰うという事が嬉しいようでホクホクしてたが、沢村は案の定御幸にからかわれて勉強どころの話ではなかった。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ