Book1

□桜月夜
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…雨の音が、うるさい。

『俺達は次に会った時には仲間も何も関係ねぇ…全力でテメェをぶった斬る』

頭の中で声が響きわたる。高杉の姿が揺らぎ過去の記憶が呼び起された。
だがそれも一瞬の事。

…何も考えず、柄を握る。
鞘から抜かれた銀の刃が空気に触れ、色を変え、煌めいた。

「刀を抜け、高杉」

かちゃり、と鍔を鳴らし、高杉が刀を一気に抜いたのを見、桂は一直線に駆け出す。
二人の間合いは直ぐに狭まった。しかし、刀を交える度に、びりびりと痺れる痛みと、かつての同士との本気の死合いで、手が震え、上手く刀を振るうことが出来ない。
桂は後方へと跳び退き、目を閉ざし、もう一度姿勢を正す。
しかし、再び目を開くと、高杉はもう十分に彼を斬れる距離へと移動していた。
高杉の刀を持った両腕が振り上げられる。目前に昏い影が落とされ、風が奔る、その影を裂くように桂は腕を動かす。
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