激甘君主信長君

□まんじゅう怖い
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皐月某日 信長目線


早朝とはいえ城内の者たちが起きるにはまだ早いだろうと思われる

誰も、城主の閨の邪魔はせんだろう

次の間で控える者がいることは教えておらん

何故も、こう耐えておるのだ?

必至に口元を己の腕で塞ぎ、声を漏らすまいとする


「貴様、俺に声は聞かせないつもりか?」


わざと貴様の弱い耳元で囁いてやる

口元を覆う腕を解き、その手を絡めとり指先を口に含み舌で辿る

「んぁ!」

身体をピクリと反応させる

反応しておるではないか、素直に俺の成すことに従えばよいものを


「もっと良い声を聞かせろ」


追い討ちを掛け、更に囁いてやる

どうしたことだ、今度は顔を背けて肩を小刻みに震わせておるではないか

あ!・・・以前にもあったな・・嫌な予感がするではないか


「有里どうした?」


ふるふると、なおも肩を揺らす有里

嫌な予感というものは当たるもので、とうとう有里は声を出し笑い始めよった


「また、あの時の思い出し笑いか?」


「ブッ!ククク・・ひ〜」
「も、もうしわけ、へっ、ぐふっ、ぶひっ、ひー、苦しいぃです」


あぁ・・・ツボにはまったか・・


そうであった、閨での最中に「良い声」という言葉は法度であった

有里が笑い出すからな

興が削がれてしまったではないか、その気になっておった俺のこの気持ち一体どうしてくれる

涙を流しながらふるふると腹を抱え笑う貴様


「ふっ、ふはは!」

つられて俺も可笑しくなってきたではないか


「まぁ、今朝のところはこれくらいしておいてやる。その代わり夜は容赦せんぞ」

笑う有里の目元の涙を指で拭いてやり、その身体を抱きなおし再び夢のなかへ


城内が動き出す暫し前のひと時
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