僕からの

□Dear Prince
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あの鮮やかな日々から

1年ほどたった。

青学には僕と英二しか残っていない。

たかさんは寿司修業。

大石と乾は、別の高校へ。

今、三年生の彼らは、歪み合いながらも

部をうまく纏めているらしい。

手塚と越前は…外国に行き、プロへ。

一人一人の未来へ、歩んでいった。


そして、僕たちは。


少し寂しいけれど、

レベルの高いテニス部で

僕と英二はダブルスとして練習した。

ゴールデンペアまでいかないものの、

僕たちは案外イイコンビで

成績は右肩上がりに成長していた。


天才から縛られた日々はもう無い。

そう、自由にラケットを振って

あの楽しい感覚を思い出すんだ。

…そう、考えていた。

だけど、現実は違う。

中等部での偉業は、高等部まで

話が回っていた。


それからはもう、

ガチガチに固められた天才の中で

期待とプレッシャーに操られるだけ。

しだいに関節が痛みだして

無視して、無理するのも限界になると

砂みたいに

コートに崩れ落ちるだけだった。

憐れみがつまった同級生の目と

「こんなものか」という先輩の目線。


僕は青学テニス部を退部した。

英二は悲しそうに、「お疲れさま」と

いってくれた。

僕は「ありがとう」とほほえんだ。

もう、僕のなかに、天才はいない。

これからも、きっと、ずっと。
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