ジョジョ長編

□一話
2ページ/2ページ


「で、テメェジジイとはどういう関係なんだ?」
「ジジイって、ジョセフのこと?」


黙って頷くのは空条承太郎。
渡り廊下をしばらく進み、部屋に通されるや否や、ジョセフとアヴドゥルはどこかに行ってしまい、要件も聞けずじまいで初対面の男と室内に二人きり状態で今に至る。

よく見ると確かに顔はジョセフによく似ている。
が、なんだこの威圧感は、普通に怖いぞ孫。


「ジロジロみるな」
「ごめん」


つい謝ってしまった。


「あー、なんていうか……ざっくり言うと、恩人かな」
「恩人ね」
「依頼主と請負人みたいな関係かな」


ジョセフにSPW財団を紹介してもらい、スタンド使いに関する調査をしているのだから間違っちゃいない、が。
あまりにざっくり説明しすぎて納得してくれないかもしれないな、なんて思いつつ相手の出方を伺う。


「たしかルノウ、とかいったか」
「うん」


返すと、空条の背後に突然人間が現れた。
いや、正確には人型のスタンドだ。
たくましい身体、迷いのない瞳、美しくなびく長髪に見とれてしまう。

スタンドは精神エネルギーだ。
彼の後ろで浮遊しているその巨体は、空条承太郎という人間の心を隠すことなく映し出している。


「すごいな……」
「お前もスタンド使いなんだろ?あんたのスタンド、ちいとみせちゃあくれねえか」
「え、私?」
「俺はあいにくついさっきスタンド使いになったばかりでな、他のスタンド使いはジジイとアヴドゥル以外知らねえんだ」


衝撃の事実。
スタンドが本体の成長によって姿を変えるという話は聞いたことがないが、ルノウは空条のスタンドをみてどこか熟練されたものすら感じていたので、ついさっきスタンド使いになっただなんてマジに信じられなかった。


「わかった」


立ち上がり周囲を見渡す。
空条のいうスタンドがみたい、とはつまり能力が知りたいということだろうが、あまりに殺風景なこの部屋で、ルノウの能力はわかりずらい。


「空条くん、ちょっと下みてて」


窓際に置いてある低い机でもいいのだが、それだとあまりに地味なので、床を指差してそういった。


「動かないでね、いくよ」


さっきまで威圧感満載だった目に好奇心の色がさすのがわかった。
そういえば学生服を来ているけど、何歳なんだろう。


「アク」
「待たせたな二人ともー!ん?あれ?」
「セスゥ〜……?」
「ジジイ、タイミング悪すぎだぜ!」
「ちょ、ちょっとまつんじゃ承太郎!スタンドをしまえ!」


さあいざスタンド能力発動!と気合をいれた瞬間、どこかにいっていたジョセフが勢いよく襖を開いたせいで、一瞬でかかったルノウのスタンドがひっこんだ。
舌打ちをかます承太郎と、拍子抜けして座り直すルノウ。
ジョセフの後ろにいたアヴドゥルは状況が掴めない様子だ。


「えーっと、とりあえず座れば?」
「そ、そうじゃな」
「おじゃまします」


ジョークなのかマジなのかわかりずらいアヴドゥルさんのボケをスルーして四人で円になって座る。


「それで?そろそろ聞かせてもらってもいいかな、私をここに呼んだ理由」


今度は逃がさんぞと言わんばかりに、こちらから先制攻撃。
わかってるから急かすなといいながら、 ジョセフが1枚の写真を取り出した。


「これは?」
「この男はDIO、吸血鬼だ」
「……それでか」
「ああ、ルノウを呼んだのは他でもない、吸血鬼狩りのエキスパートとして、そしてスタンド使いとしてDIOの討伐に協力してほしい」
「なるほど、話はわかった」
「急に呼び出してしまったのは謝ろう。しかしこうでもしないとまた長いことどこかに行ってしまうだろうからな。ああするしかなかった」
「つまり事は急を要する、と」
「そういうことじゃ」
「ふうん」


話についていけないながらも、ルノウとジョセフのあいだにながれる空気が変わったのを感じ取った二人は黙り込んでしまう。
沈黙が空間を支配してどれくらいかたったとき、沈黙をやぶったのはルノウの声だった。


「私、高いけど」
「そんなことは承知している。これはいつも以上に危険な仕事になるだろう……それにワシはルノウを危険な目に晒すのは気が進まない」
「それでも、私の力が必要……でしょ?」


ジョセフをみつめるルノウの目。

依頼主と請負人であるまえに、一人の友人として、彼に笑いかけた。

目を見開き頷くジョセフ。
そして、帽子を取ると、それを胸に当てルノウにいう。


「このDIOという男の能力は全くの未知数だが、わかるのだ。かなり邪悪な力をもったスタンド使いであるということが。命を落としかねない危険な戦いになるということが。だがルノウ、おぬしでなくては頼めない。おぬしの力が必要なのだ」


どうか、共に戦ってはくれないか。


「あなたがここまで言ったんだ、私はその誠意に答える義務がある。どうか共に戦わせてくれ」


この依頼、引き受けよう。



二人は、笑いながらそういった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ