黄金の地平(夢小説)

□黄金の地平 第1章
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序章

 古き神はその存在を失くし、大地の子らは新しく生まれた神々を崇めた。新しき神々は、大地の子らを自分たちの創造物であるかの様に、玩具の如く弄んだ。子らは神々を恐れ、敬った。万物の源が、母なる女神である事を忘れて。



第1章

 ギリシャ・アテネ東部。イミトス山奥地、聖域近くに霧に包まれた神殿があった。巨大な円柱が連なる石造りの神殿のファサードには大地を這う2匹の大蛇の姿が彫られている。ここはアヴァロン。古き大地の女神を祀る神殿がある秘境。そこには、女神の巫女と神殿を守る戦士達が生活を営んでいた。

 一人の少女が神殿の入り口から姿を現した。白いローブを纏い、腰には金糸で編まれたベルトが巻かれている。そのベルトは黄金の蛇の様にも見えた。少女は両手に大きな籠を抱え、石段をゆっくりと足を踏み外さない様に降りている。淡い金緑の長い髪は、肩辺りでベルトと同じ金糸で左右二つに緩やかに纏められ、太陽の光に反射してキラキラと輝いている。深い森を思わせる瞳は顰めた瞼に覆われていた。
「重い…。何で私がこんな雑用をしなくちゃいけないの…。巫女長様の意地悪!」少女は呟いた。

 「フィンバール!またお勤めを怠りましたね。今日は聖域のアテナ神殿まで織物を運んでもらいますからね。あなた一人で!」白いニカーブの様な顔を覆うローブを纏った巫女は冷たい声で言い放った。表情は見えないものの、鋭い眼光でフィンバールを睨みつけている。巫女が怒っているのは誰が見ても明らかだった。
「そんなぁ巫女長様!あんな大量の物をどうやって一人で運ぶんですか!?グウェン、助けて!」フィンバールは嘆くと、隣に居る自分そっくりな巫女に泣きついた。「グウェニヴァーに助けを求めても無駄です!さぁ、さっさとお行きなさい!他の者は女神様へのお祈りに参りましょう」巫女長はグウェニヴァーの手を引き、神殿奥へと歩いて行った。グウェニヴァーは振り返り、申し訳なさそうな顔をしてフィンバールに手を振った。「双子なのにどうしてあんなに性格が違うのかしら…。グウェンは慎ましく信仰に熱いというのに、フィンは街へ行きたがってお勤めを放棄したり…」巫女長は深いため息をついた。……あの子の気持ちも解らなくもない。しかしその気持ちは他人に悟られてはならない。私の秘めたる想いは——
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