黄金の地平(夢小説)

□黄金の地平 第1章の2
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フィンバールと貴鬼は、お喋りを楽しみながら順調に進んでいた。もう少しで金牛宮にたどり着くという所で、突然フィンバールが自分の長いスカートを踏みつけて転んでしまった。「フィン大丈夫かい?」貴鬼は、フィンバールを助け起こした。「あっ痛っ〜。何なのこのスカート・・・。ちょっとあっち向いててくれる?」フィンバールは貴鬼に後ろに向くように言うと、長いローブをたくし上げて腰のベルトに挟み込んだ。足首まであったローブの裾は膝が見える位置までに短くなっていた。「これで良し、と。巫女長様が見たらびっくりするだろうけど、転んで怪我するよりは良いよね」フィンバールは裾の位置を確認しながら呟いた。「へ〜。それなら躓かなさそうだね。早く行こうよ。おいら腹が減ったからさっさと終わらせたいんだ」「ああ、ゴメンね。まだまだ先は長いし、急ぎましょうか」太陽は東の方角から二人を照らしていた。

留守の金牛宮を抜け、双児宮にたどり着いた。主(あるじ)を無くした宮は入り口と内部に少数の雑兵が居るだけであった。足を踏み入れると、内陣に飾られた双子座の黄金聖衣が目に入った。(まだ帰って来ないんだ・・・。グウェンが施したアヴァロンの魔法もアテナの聖闘士には役に立たないのかな・・・カノン様・・・)湿った冷たい空気が気分を落ち込ませた。フィンバールは聖衣を真っ直ぐ見据え、立ち尽くしていた。「フィン・・・早く行こうよ」貴鬼は遠慮がちに小さく声をかけた。フィンバールは我に帰ると貴鬼に微笑んで、歩き出した。続く巨蟹宮も陰気で湿った空気を感じさせた。冥界への入り口に近いとか、主が彷徨える魂を夜な夜な冥界へ送り返しているとか、過去、壁に浮き出ていた死者の顔は主に捨てられた女達の恨みが壁に具現化したのだとか、主は三回死んで三回蘇った奇跡のゾンビである等々あまり宜しくない噂が広まっている宮である。「デスマスク様も変な噂が立って難儀よね。フフツ」主不在を良いことに、フィンバールは貴鬼と噂話で盛り上がり笑い合った。花屋の女の子にフラれたらしいデスマスクは、アルデバランを強引に引き連れて傷心旅行に出ていたのだった。「昔はすっごく怖そうなイメージだったけど、意外に純情なのね」「ま、三回も死んでたら性格も変わるんじゃないかなぁ。おいらは死んだことないからわからないけどね!」貴鬼の冗談にフィンバールはクスクスと笑った。
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