黄金の地平(夢小説)

□ 黄金の地平 第4章
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太陽が地平の彼方から顔を出そうとする刻、騒がしい男たちの晩餐も終わり、居間からは寝息や時折大きないびきが聞こえてきた。
酔っ払った男たちの談笑が煩く、メイヴは明け方まで眠る事が出来なかった。

これでようやく眠れる…メイヴは安堵のため息をつき、カーテンの隙間から差し込む弱々しい光をぼんやりと眺めていた。
今日は早朝から祭りの準備と夜は晩餐で体は草臥れていたのだ。窓の外は風が強く、林檎の葉が揺らめいて優しい音を奏でていた。
その音に耳を傾けているうちにメイヴはまどろみ、夢か、単に過去の出来事を鮮明に思い出しただけなのか…低くどこか色気を含んだ優しい声が聞こえてきた。
懐かしく、狂おしい程に愛しい声。声はメイヴの耳元近くで愛の言葉を奏でた。


どうして今更、彼の声を思い出すのだろう。
もう11年も前になる。”彼”は私の事など覚えてないに違いない。
私も”彼”の事は何一つ知らないのだ。


心地よい声に導かれるかのように、メイヴは現実とも夢ともつかない道を歩いていた。
 ここはどこなのだろう。早く起きて朝食の準備をしなければ…気がつくとメイヴは15歳の少女の姿をしていた。
長い長い夢を見ていたようだ。妹たちが年頃の女性になっていた。
フィンバールは成長しても相変わらず奔放で、巫女を辞めて聖域の男に嫁ぐと言い出していた。
グウェニヴァーは敬虔な巫女となっていた。将来、自分の後を継ぐのは彼女だろう。夢を思い出し、メイヴはほくそ笑んだ。

「変な夢!いつの間に眠ってしまったのかしら?ああ…そうだ。大巫女様に呼ばれたんだったわ。早く行かないと…」メイヴは我に返ると大急ぎで大巫女の座する神殿へ向かった。
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