BLEACH短編
□言葉の代わり
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『はぁ…』
三番隊第四席、佐藤 涼はとある流魂街の穏やかな地区に来ていた
『今日もまたやっちゃった…』
彼女は同じ隊の副隊長である吉良イヅルに想いを寄せていた
『なんであんなこと言っちゃったのかな…。吉良副隊長、絶対面倒くさい奴だって思ってるよね…。』
それはつい先程のことーーー
『ぬわああああああ!』
「え、どしたん?涼ちゃん。」
彼女はひとつのミスをした
昨日のうちに七番隊へ届けなくてはいけない書類がまだ彼女の手元にあったからだ
「あらら、やってもーたなぁ?」
『ヤバイこれ絶対、射場副隊長からげんこつだ…』
「ぎょうさん愛の詰まった、な…。(遠い目)」
『…市丸隊長、一生のお願いです!どうかこの書類を………』
彼女の振り返る先にあるのは、開いた窓となびくカーテン
『あんのサボり魔ぁぁぁぁぁぁあああああ!』
彼女の手の中の書類に無数の皺が寄る。
『かわいい部下の一つや二つや三つや四つの尻拭いくらいしてくれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
「そんなに多かったら、げんこつじゃ済まない気がするけどね。」
市丸への不満を叫ぶ彼女に、いつの間にか執務中であるはずの吉良が菓子を持って涼の元へ来ていた
『吉良副隊長?どうしたんですか、お菓子なんか持ち歩いて。おかしいですよ。お菓子だけに。』
若干不貞腐れながら、吉良に問う
「君が叫んでるのに来ない方がおかしいよ。慰めにお菓子を持ってきただけ。」
半ば呆れながら吉良は持ってきたお菓子を彼女の前に差し出した
『…子供扱いしないでください。というか、私を慰めにとか言っておきながらそれ、一昨日に松本副隊長がお持ちになったお菓子じゃないですか。押し付けないでご自分で食べてください。あと渾身のギャグをスルーしないでください。』
ミスをし、市丸に逃げられ、子供扱いされた挙げ句(自称)渾身ギャグをスルーされたショックで無気力に捲し立てる
「それはすまなかったね。じゃあこのお菓子は要らないということで…」
『食わないとは言っていない。』
苦笑いしながら言う吉良に彼女の目が細められる
「じゃあどうぞ。僕は今お腹がふくれているから、食べ物のためにも君が食べてくれないかな?」
今度は優しい笑みで、彼女がお菓子に手を出しやすい用に促す
『…いただきます。』
彼女がお菓子をもそもそと食べているのを目に、吉良が言う
「仕方がないよ。昨日は忙しかったんだから。」
そう、本当は昨日に書類を届ける予定だった
それができなくなったのは、現世に出現した虚退治に行った三番隊の精鋭部隊からの緊急要請だった
結局解散できたのは業務時間を大幅に越えた時間
「僕が行ってくるから、佐藤君は休憩にしていなよ。」
吉良はそう言って眉尻を下げ、皺だらけの書類を丁寧に伸ばしながら戸に向かう
『…ですか。』
「え?」
『なんでですか!?どうしてあなたはいつもそうやって…、そうやってフォローばかりしてるんですか!?
やりたくないならそう言えばいいじゃないですか!!』
涼の突然の大声に、振り向いた吉良は驚き戸惑う
「お、落ち着いて、佐藤君。」
『うるさい!私の気も知らないで!』
吉良の手にあった書類をひったくり、涼は走って部屋から出ていく
「佐藤君!待ってくれ!」