BLEACH短編


□言葉の代わり
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ーーーーということがあったのだ

書類は当人がきちんと謝り、狛村には急ぎではないとのことで許してもらえたが、射場からはげんこつをもらった

その帰り、涼は吉良にどう顔を合わせれば良いのかが分からずに流魂街の川をただ眺めていた

『どうしよう…。帰ってもきっといつもの笑みで「すまなかったね、僕は大丈夫だよ」って言うんだろうな…』

彼女はただ、吉良が好きなだけだった
疲れたときは休んでほしいし、悪いときは悪いと言って欲しかった
それなのに吉良はただ笑っている
それは彼女にとって苦痛でしかなかった

『わかってる。吉良副隊長がそういう人だってこと。…全部、私が悪いのに。
でも、心配するこっちの身にもなってほしいよ…』

後悔する彼女の背後に、金の髪が揺れる

「すまない。」

『!? 吉良副隊長!!
こ、こんなところに何の用ですか!今副隊長の顔みたくないんです!あっちに行ってください!』

わざわざ探してくれたのか、と聞きたい
本当は謝りたかった、と言いたい
なのに出てくるのは真逆の言葉

「すまない。でも…」

吉良は涼の頬へ手を伸ばす

「泣いている君を放っておけないよ…」

彼女の瞳には、たくさんの流れ出る感情
それを一筋一筋、受け止めるように動く吉良の細い指は、走ってきた後のように熱かった

「本当はわかっていたよ。隊の中で、君が一番僕の心配をしてくれていたこと。でもね、だからこそ僕も、君を心配していたんだ。」

なおも流れ続ける彼女の感情

『吉良副隊長がいつも無理をしているんです…!いつか倒れてしまっては困るからってだけです!だから…』

「本当に?」


ちゅっ…


吉良らしい控えめな口づけに、涼は目を見開く

「すまなかった。だからどうか、今だけは、君の本心を聞かせて…」

吉良は優しく涼を抱き寄せると、彼女の声を聞き逃さぬようにと彼女の口へ耳を寄せた

『私…は…。吉良副隊長を、お慕いしています…。』

「うん。」

吉良の指が彼女の髪をすく

『いつもいつも、吉良副隊長に迷惑ばかりかけて、八つ当たりをして、本当に申し訳ないと思っています。』

「…うん。」

『吉良副隊長が私の大声を聞いて駆けつけて来てくれたのも、お菓子くれたのも、私のことを子供扱いしてた訳じゃないってわかってます。ここに来てくださったのも嬉しいって思っています…』

「ねえ、佐藤君。僕ね、少しだけ、怒ってるんだよ。」

突然の吉良の言葉に、彼女はビクリと肩を震わす

『申し訳ございません…。』

「許してほしいかい?」

吉良は彼女に意地悪な笑みで見下ろす

『…はい。』

彼女の瞳がまた、濡れはじめる

「君が出ていく前、『私の気も知らないで』って言ったよね。
じゃあ、君は僕の気持ちを考えたことがあったかい?」

『…え?』

「でも、僕の気持ちはさっき君に伝えた。だから…」

彼女はまだ驚きを隠せていないが、吉良の顔は穏やかだった

「今度は君から、口づけてほしい…。
確認させて。君が本当に、僕のことが好きなのか。」

吉良からこんな言葉を聞くとは思っていなかった涼は一瞬固まった後、顔を真っ赤にさせて呟いた

『……私は面倒くさいですよ。きっとこれからもあなたに当たるでしょう。それでも良いのですか。』

その言葉になにも返さず、その代わり吉良は彼女を見つめる

『……知りませんからね…』

涼はゆっくりと吉良に顔を近づけ、やがて夕焼けに照らされた二人の影は、ひとつに繋がった





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