さやみるきー小説
□初恋に似たもの。
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「あの、、すみません、これっ、、落としましたよ、、。」
息を切らしながら駆け寄ってきた女の子。
私が道で落としてしまった財布を拾ってわざわざ走って追いかけて来てくれたのだ。
『ありがとうございます。、、あ、、。』
財布を受け取り初めて女の子の顔を見た。
クリっとした大きな目。薄い唇。プクっとしたほっぺた。
私は女の子の顔を見た瞬間、心を奪われてしまった。
「じゃあ私はこれで。」
方向を180°変えて戻ろうとする彼女の腕を私は思わず掴んだ。
「、、え?」
大きな瞳で見つめられ、私は思わず目をそらした。
『あの、、お礼がしたいんですけど、、。この後、、空いてますか?』
「大丈夫ですよ!これから家に帰ろうと思ってたところなので。」
ニコッと微笑む。
その笑顔を見ただけで倒れてしまいそう。
『あの、、お名前は、、?』
「優花です!」
優しい花、、
まさにその子にぴったりの名前だ。
『私は彩って言います。財布をわざわざ届けてくれて本当にありがとうございます。』
その後私は優花に夕飯をごちそうした。
優花とは初めて会ったとは思えないほど会話も弾み、私はますます優花に引き込まれていった。
そして帰り際、私達はアドレスを交換した。
「彩ちゃん、今日はすっごく楽しかった!ありがとう!またご飯行こうね!」
そんな可愛いこと言うから。
『もちろんや!』
私は初めて恋をした。
その後優花とは頻繁に連絡を取り合い、私が猛アタックした末、付き合うことになった。
優花はいつもこう言った。
「私、彩ちゃんの笑顔大好きやで!だからずーっと笑っててな!」
私も優花の笑顔が大好きで。
いつも笑顔の2人でいられた。
、、この日までは。
普段通り家でゴロゴロしていると携帯が鳴った。
優花からだ。
『もしもし優花?』
「、、彩、、ちゃんっ、、。」
優花は泣いてる様子だった。
『優花?泣いてるん?どした?』
「彩ちゃん、、たすけて、、」
今までにない弱々しい優花の声に自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。
私は急いで優花の家に向かった。
ピンポーン
インターホンを押すけど返事はない。
ドアに手をかけると鍵が空いていた。
『優花、、?入るで?』
私は優花の家に上がり優花の部屋へ急いだ。
ガチャ
『優花、、?』
そこには服を着ていない優花の姿があった。
部屋もひどく散らかっている。
「いやぁ、、彩ちゃん、、来ないで、、。」
『優花、、何があったん?』
私は優花に近づき羽織っていたパーカーを優花にかけ、抱きしめた。
「私な、、1か月くらい前から1人の男に付きまとわれてて、、やっと最近姿が見えなくなったと思ったら今日、急に家に上がり込んで、、レイプされた、、」
『、、っ!』
「言ったら彩ちゃんの笑顔壊すと思って言えなかっ、、」
優花がふいに口を止めた。
と思ったら
「いやぁああああ!やめてっ!!!触らないでっ、、!いやっ!たすけて、、彩ちゃんっ、、、」
きっと思い出してしまったんだろう。
急に優花が声を上げて暴れだした。
『大丈夫やから!私やって!!』
「いやああああああっ!」
優花はすごい力で私の腕を振り払い部屋を飛び出した。
『優花っ、、!』
優花は自分の家までも飛び出してしまった。
私が玄関のドアを開けて外に出た時にはもう遅かった。
優花は、、
優花は私の目の前で大型のトラックに跳ねられた。
『っっ?!優花っ?!』
優花を跳ねたトラックはそのまま通り過ぎて行った。
私は震える足で優花に近づくと優花は頭から血を流していた。
『優花っ、、!優花、、』
優花の上半身を抱きかかえると優花はうっすら目を開けた。
『優花!』
「彩、、ちゃん、、。」
『優花っ、、ごめん、、ごめんな、、もっと早く気付いてやれなくてっ、、』
「彩ちゃんは悪くないで、、」
今にも消えそうな優花の声に私の胸は締め付けられた。
「私、、彩ちゃんの笑顔っ、、だいすき、、やで、、、。最後に、、壊してごめんな、、。愛してるで、、、。」
それだけ言うと優花は目を閉じた。
『いやあああ!優花っ優花ああああ!』
私は、、永遠に優花を失ってしまった。