ナンバカ夢 長編

□6.薬
1ページ/4ページ

猿門side

俺は89番を連れて医務室に向かっていた。

チラリと横目で様子を見てみると、微妙に苦しそうにしているのが見える。

俺にわからないようにしているつもりなのだろうが、どう見ても様子がおかしい。

時折胸元を抑え、肩で息をしている。

2番と組手をしている時もそうだったが、息が上がっていて苦しそうだ。

「おい、大丈夫か。」

一旦立ち止まり、89番に声をかける。

「苦しいか?」

「...いや、大丈夫だ。」

...どう見たって大丈夫じゃないだろ...。

深呼吸をしているが、うまく吸い切れてないように見える。

たぶん、呼吸が深く吸えない分、なかなか苦しさが消えないのだろう。

「マジで大丈夫かよ...。」

「大丈夫だ。」と言って聞かない89番。

まぁ...どうせすぐに医務室に着くしな...。

「...そうか。行くぞ。」

89番は無言でついて来た。

そこから、互いに医務室に着くまでは一言も発しなかった。

「着いたぞ。ここが医務室だ。」

医務室に着くと、ノックをしてから、ドアを開ける。

「失礼します。五舎八房から囚人番号89番を連れてきました。」

「...猿門か。遅かったじゃねえか。」

椅子を回転させ、銀髪の男が振り向く。

「すみません。」

「まぁいいが、で、そいつが例の......っと。89番だな?」

「はい。」

俺の後ろに隠れていた89番を前に押し出す。

「この人はウチの刑務所の総合医院長の御十義翁さんだ。挨拶しろ!」

俯いている89番の顔をあげさせ、挨拶させる。

「囚人番号...89番です。はじめまして...。」

「ふぅん...こいつか。」

小さな声で翁さんが呟いた。

「今日から俺がお前の主治医だ。とりあえず、診察するから来い。」

そう言うと、89番を連れて部屋の奥へと向かう。

「あー、お前はそこで待ってていいぞ。」

ついて行こうとすると、そう止められた。

「...?そうですか...。」

俺は言われたとおり、その場で待つことにした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ