ナンバカ夢 長編
□9.猿門の困惑
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猿門side
診察を終えた89番を八房へ送る道中、俺はいくつか質問をしてみることにした。
「なぁ...昨日から気になってたんだが、何の病気だ...?」
「えっ...。」
「昨日に続いて今日も診察だろ...?それに昨日は薬ももらってた。あれ何の薬だよ?」
「えっと...。」
こう続けて診察があるってことは、結構大きな病気の可能性もある。ウチの舎普段から鍛錬とかで運動する機会も多いからな...。一応その辺は知っとかねぇと...。
「それは...その、...。」
89番は、困りながらモゴモゴと口ごもってしまった。
「あぁ?」
何を言ってるのかも、何を言おうとしてるのかもわかんねぇよ。
「何だよ、はっきりしねぇ奴だな...。一応俺はお前のことを任されてんだ、それぐらい知っとかねぇとこっちも困るんだよ。」
「...っ...。」
「...っ...チッ...。」
今だに口ごもって何も言わない89番に、わずかに苛立ちを覚える。
「ウジウジしてんな!そんぐらいちゃっちゃと言えよ!」
一度立ち止まり、オドオドとしている89番に詰め寄ると、89番はとっさに後ずさりをした。そして、
「っ!!?」
「うぉっ!?あっぶね!」
足がよろけて、後ろに転びかけたところを慌てて受け止めてやる。
危ねえ危ねえ...こんなんで怪我させたってこっちが困る...って、...
「あ......。」
向き合っていた状態からとっさに受け止めたため、今の状態は前から抱きとめるような形になっている。
近くで見て、思わず綺麗な顔立ちに見とれてしまう。
「...っ...離せ!」
すると、突き飛ばされるような形で89番に振り払われた。
「ぁぁ、わ...悪い。」
まぁ、相手も男だ。男にずっと抱きしめられてる趣味なんかないだろう...。
89番は訝しむような目で睨んできている。
「あー、悪かった。安心しろ、俺に男と抱き合う趣味なんざねぇよ。」
そう言っても、89番の表情はあまり変わらなかった。
今だに睨み続けている89番を連れて、俺は歩き出した。