ナンバカ夢 長編

□19.小さな溝
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猿門side

俺は今、医務室で一人待たされていた。

89番の診察の時は、基本的にいつもそうだった。診察の時は俺はついて来なくていい、そこで待っているように、と言われるのだ。

今日の診察はやけに時間がかかっていた。

もしかして...昨日の組手が原因だったりするのだろうか...?

少し心配に思ったが、『なぜそこまであいつを心配してんだよ俺!』と心の中で叫び、他のことを考えようとした。

だが、特に何も思いつくこともなく、余計にモヤモヤしてしまっただけだった。

「...待たせてすまない。」

しばらくすると、89番が戻ってきた。翁さんに会釈をし、医務室の外に出る。

「...大丈夫なのかよ...?」

「...ぁぁ。」

89番は俺から目を逸らして答えた。

......はぁ。

昨日の組手が原因なのかはわからねぇが、こいつとの間に...なんか...こう....溝?みたいなものができてしまったように思える。

もともとあまり話すことは多くはなかったが、今日は特に話さないし、目すら合わせてこない。

......なんなんだよ...。

沈黙が続き、ただ歩いていた。

「...主任。」

すると突然、89番に声をかけられる。

「...何だ?」

89番はしばらくの間、返答しなかった。

そして、恐る恐るといった感じで、口を開いた。

「...今日もまた...組手の相手をしてくれないか...?」

「......。」

「今日は...今日は昨日のようにはならない!」

わずかにだが、声が震えていた。

「......今日は58番とやる約束をしてんだ。」

本当は昨日58番と相手をする予定だったのだが、昨日は89番と相手したからな...。

今日は58番とやってやらねぇと...。

「...そうか...。」

89番は肩を下げた。

「ならば...明日...明日ならいいか?」

「...暇だったらな。」
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