おそ松夢 短編
□近所に住む彼
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「いやぁ〜・・・助かったよ〜!ありがとねぇ」
赤いパーカーの彼は、笑いながら私の横を歩いている。
「いえ、お役に立ててよかったです」
「マジで女神だわ」
彼はそんなことを言って笑う。
「これで帰れるわ〜」
といいながら、先ほど買った本を嬉しそうに見つめる。
彼が探していたのは、猫が主人公の可愛らしい小説だった。まだ読んだことはないが、私自身も少し気になっていた本だったので、すぐにわかった。
「猫が好きなんですか?」
意外・・・というほどでもないが、少しだけ驚いた。それと同時に、こんな可愛い本を読むのかと内心笑ってしまった。もちろん、悪い意味じゃなくて。
「いや?これ弟に頼まれたんだよね。パチンコで勝ったことを他の兄弟に言わないでもらうための賄賂」
随分と安い賄賂だなぁ・・。
「弟さんは猫がすきなんですか?」
「まぁね。本人が猫に変身したり猫カフェで猫として働くくらい好きだよ」
「はい!?」
あはははと笑いながら言うが・・・冗談だよね・・・?
「と・・・とにかく・・・お役に立ててよかったです・・じゃぁ・・失礼しますね」
にこりと笑ってから、彼に別れを告げて帰路につく。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「あの・・・・?」
「ん?」
いや、ん?じゃなくて!!
「どうして着いてくるんですか・・・!?」
別れを告げたはずの彼は、なぜかぴったりと私の後を着いてくる。
「え〜?だって俺も家に帰るし。てか方向一緒じゃん?」
「そ・・・そうかもしれませんが、なんでこんなに近いんですか!?」
彼は私の真横を歩いていて、私がスピードを速めたり緩めたりしても、私に合わせて横にくっついていた。
「いいじゃん別に。ほら、俺らの仲じゃん?」
「どんな仲ですか!?」
おかしい、私と彼はつい数分前に初めて話したばかりだ。
「え・・・・それ言わせちゃう・・?こんなとこで?えぇぇ・・・意外と大胆だねぇ・・・?」
「殴りますよ!?」
赤い人ははっとした顔をすると、顔を赤らめながら口元を押さえた。
なんなのこの人・・・完全におちょくられてる・・・!
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ?」
「誰のせいだと思っているんですか!?というかやめてください何をするんですか!??」
彼は笑いながら肩を組んできた。驚いた私は慌ててその手を振り払う。
「照れなくていいのに〜?」
「照れてない!」
そうこうしながら、歩くこと数分。私の家が見えてきた。私は彼から逃げるように家まで走った。
そしてもちろん彼も走る。
「なんで走るの!?」
「こっちのセリフですよ!?なんで貴方まで!?」
本当になんなんだ・・・。
「へぇ〜・・・。ここが家かぁ・・。俺んちね、あそこ」
そう言って彼は自分の家を指差した。
「知ってます・・・。」
「え!?嘘!?なんで・・!?・・・・・ストーカー?」
「怒りますよ?」
どちらかというとそれはあんただろうに。
「まぁいいや・・・・じゃぁ、俺も帰るわ。ばいばーい」
手を振りながら帰っていく赤い人。よかった・・・・なんか知らないけど帰ってくれた・・・。
「また明日な〜」
笑顔で手を振る彼に、一応私も手を振り返しておいた。
なんだかとても疲れた気がする・・・。
・・・・・・・・・・・また明日?