ナンバカ夢 長編
□3.五舎八房
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猿門side
「お呼びでしょうか、看守長。」
89番を送った直後、また看守長から呼び出され、俺はまた看守長室へと足を運んでいた。
「何度もすまないな...。で...どうだった?問題はなかったか?」
看守長は少し身を乗り出すようにして聞いた。
まぁ...内容は予想していたが。やはり89番のことでか。
「今の所は大丈夫かと...。特に問題もありませんでした。」
「そうか...。」
看守長は安心したように椅子に座り直した。にしても...やっぱり変だ...。何でこんなにもあいつに気をかけているんだ...?
「それはよかった。...安心した。」
「あの...。」
「どうした...?」
「なぜ看守長はそこまで89番のことを気にかけているのですか?特に、問題も無いのでは...。」
資料にもそうありましたよね?と付け加える。
すると、看守長は困ったように眉を潜めた。
「うむ......そのことなのだが...。」
「?」
「先程も言ったが...訳ありなのでな...資料に書けないことがあってな.... 。」
資料に書けない...?つまりは、何か問題があったのか...?
「まだ深くは言えないが...89番には少し問題があってな...。」
その問題が何なのかを知りたいのだが、この様子じゃ、教えてはくれなそうだ。
「そこで...頼みがある。」
「何でしょうか?」
「君が忙しいのは重々承知の上だ...。できる限りでいい、89番のことは、君が見てくれないだろうか?」
「俺が...ですか?」
「ぁぁ。」と看守長は頷く。
「89番には問題がある...だが、できれば何事も起こしたくないのだ。」
看守長は、しっかりと俺の目を見つめる。
「君を信頼しているからこそ言う、89番のことを、頼めないだろうか。」
まっすぐな目で、まっすぐな言葉。本当に、俺を信頼してくれてのことなんだろう。
これを、断る道理なんて、俺にはない。
深くはわからないが、仕方が無い。
「...わかりました。任せてください。」
俺はそう言って帽子を被り直した。