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「難儀やなあ」
とあいりの隣でつぶやくのはあいりの幼なじみの白石蔵ノ介である。というのも、どういう訳か不満気なあいりに白石は困り果てていたからだ。
同じ学校、同じクラスである彼らは幼なじみという点を抜いても良く話す。加えて白石は幼い頃からのクセが抜けないのか何かとあいりの世話を焼いた。あいりもそれを受け入れており、特に気にする由もなかった。
HRが終わり、放課後になってからも特に当たり障りもない。只、今日は双方共に部活が夜遅くまである為、防犯の意を兼ね、共に帰ろうと白石があいりに告げたのであった。
「…あいり、何が気に入らないんや…な?黙っとったら分からんで?」
白石はあいりに優しく質問する。するとあいりは何故かもっと機嫌を悪くしてしまったようで白石を思いっきり睨み付けると早歩きで前を行ってしまった。
白石は少し慌てて待ちなさい!と追いかける。暗い道を走るのは危険だ、と白石が言い切る前にあいりは盛大につまずいて転んだ。
「言わんこっちゃない…!あいり、大丈夫か?」
「っ…うるさい…」
あいりは顔を赤くして白石の手を借りずに立ち上がった。
「…蔵之介…」
「ん?なんや?」
白石はハンカチをあいりに渡すとあいりが素直に受け取った事にホッとしながらあいりの問いかけに応じる。
「…蔵之介ってさ、私の、何?」
そう聞いたあいりの顔は何故か泣きそうで、苦しそうだった。手を握りながら今にも泣きそうな可愛い幼なじみの姿を見て白石は真剣な顔立ちになる。
ぎゅ、とあやす様に白石は優しくあいりを抱きしめる。
「決まってるやろ…」
言葉の先はあいりの口の中へと消えていった。

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