Shine
□第6章
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「うわぁ・・・ここが
ソノオタウンかぁ・・・」
くるりが嬉しそうに呟く色鮮やかな花が咲き乱れるこの街は花が好きなくるりにとっては、天国である
くるりがシンオウで1番訪れたい場所はここだったがジム巡り、石探し、コンテスト巡りをしていた頃は色々とやることが多く、移動はほとんどフライゴンにのって空を移動することが多かったためこの街を訪れる機会はなかった
だが、今はもうすることは済ませ、後はシンオウリーグまでポケモンたちの調整をしながら、その日を待つだけ。時間はたっぷりあるから歩いて旅ができる
「ここ・・・とっても綺麗な街だね」
そう言って振り向くくるり、調度吹いてきた風がその金色の髪を揺らすたびにツヤのある髪が美しい光沢を見せる
さらに風に乗ってきた花びらがくるりの周りを吹き抜け、より一層彼女の美しさを際だてる
花びらの舞う中に佇む彼女は、さながら花の精のようだ
この街と、くるりはよく絵になる
シンジも、一瞬返す言葉が出なかった、ただボーッとしていたのか、それとも彼女に見とれていたのか・・・はたまた、街の景色になど興味はないのか
「・・・ここに、来たかったんだろう、よかったな」
いつも通り素っ気なくくるりに声をかけるシンジ特に違う様子もないのだが上機嫌のくるりにとっては、いつもよりも耳に残る言葉だった
「うん、これもシンジくんのおかげかなぁ」
えへへっ、と無邪気に笑うくるり
その髪に、先ほど風に乗ってきた花びらがついていたそれに気づくことなくはしゃぎまわるくるりに先に気づいたシンジが声をかける
「オイ、動くな」
「えっ」
その一言で素直にピタッと動きを止めるくるり
素直に・・・というよりは、びっくりして反射的に動きが止まった・・・という方が正しいだろうか
「何事か」という顔でじっとシンジを見つめるくるりにシンジが近づく
真剣な顔つきで迫ってくるシンジにくるりは声も出なくて、コイキングのようにパクパクと口を動かしていた
シンジの顔と自分の顔との距離が縮んで行くのに比例するかのように、くるりの鼓動がと煩くなっていく
シンジの手がまっすぐに自分の方へと伸びてきて思わず目を瞑るくるり
その手はくるりの予想を裏切り、彼女の頭の方へと伸びていく、フッと何かが自分の髪に触れたような気がしてくるりがそっと目を開くと・・・
「取れたぞ・・・って、お前・・・何だその顔は」
目の前にいるシンジの手には一枚の花びらが
手の上の花びらを見つめていたシンジが顔をあげくるりの顔を見るなりギョッとする
そ、そんなに酷い顔でもしてるのかとくるりが「そ、そんなって・・・どんな顔・・・?」と恐る恐る尋ねた
ろくな答えは返ってこないだろうと覚悟はしていたくるりだが、シンジが言い放った回答はくるりの予想の斜め上をいった
「・・・オクタンみたいな顔」
「お、オクタン!?そ、そんな眠そうな顔してないと思うけど・・・」
オクタンのように眠そうな目になっているのかと勘違いしたくるりが"嘘でしょう"と顔に手のひらをあてる
「そういう事じゃない」
もう元に戻ったし、そんなに引きずるような内容の話ではないため「もういい」とシンジが切り捨てるとくるりの表情も緩む。
と同時に
な、なんだ・・・アレを取ってくれただけかと少しだけ残念な気持ちにもなった
(・・・ちょっとまって、残念ってなんで?
私は・・・あの時何を考えた?何されると思った?)
そう考えはじめると冷静になった頭がまた混乱し始めるしかも、いつも通りしれっとしているシンジの様子を見るに、ドキドキしたのは自分だけ、そう思うとまた恥ずかしくなってきたくるり
再びオクタンへと逆戻りだ
そんなくるりの様子を見てさっきから何なんだ・・・と訝しげな顔をするシンジ
・・・ううん、違う・・・あれは距離が近かったから、ドキドキしただけだ、誰だってあんな距離まで迫られたら・・・ドキドキするよね そう自分に言い聞かせ
「さ、さあもう行こっか!!」
慌てて話題をかえて落ち着こうとするくるり
「オイ、今日はこの街が見たいから・・・ポケモンセンターに泊まるんじゃなかったのか」
「あっ・・・ごめん、慌ててたから・・・完璧に忘れてました」
自分で言い出したことなのに、忘れていたくるりとても恥ずかしそうに“じゃあ、1回ポケモンセンターにいって、荷物置いてこようよ・・・”と今度はポケモンセンターの方へと素早く方向転換し足早に歩き始めた
さっきまでの、この街の美しさ、この街を見ることが出来たことに対して興奮したからなんかじゃない、それとはまた別の感情がくるりの鼓動が速くなる
熱を帯びた顔を隠すように俯いて、この顔をシンジに見られないようにと、そそくさ歩くくるり
反対に、前をそそくさ歩くくるりには、シンジの表情はもちろん見えない