Shine
□第3章
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「ねぇ、待ってよ
ねーえ、待ってってばー」
あいも変わらずしつこく後ろを着いてくるくるりに面倒くさくなったのか
シンジはもう返事をしようともしない
「ねぇ待って・・・・ひゃあっ」
そろそろいいかげんにしろ、と言ってやろうとシンジが振り向いた調度その時
くるりが木の根に躓き転ぶ
咄嗟にシンジはくるりを受けとめた
だめだ、転ぶと思い目を瞑っていたくるりが痛みが来ない事を不審に思いそっと目を開けた
「あ、シンジくんが受けとめてくれたんだ、ありがとう」
にかっと眩しい笑顔を向けるくるりにシンジもハッとした
特に助けるつもりもなく、反射的に動いていた
そういう感じだった
だから礼をいう必要はない、
反論しようとしたシンジは腕のぐっしょりとした感触に言葉をなくす
さっき、湖に落ちたくるりの服はびしょびしょになっていて彼女の体を受け止めた腕に水がつたい腕まで濡れていた
腕の感触と、もう一つシンジには気付いたことがあった
ずぶ濡れになったくるりの着ていた白いブラウスは
くるりの身体にピタリとはりつきその意味を果たすことなく彼女の肌と下着を透かしていた
気付いたとたんに目のやり場に困ったシンジは
上着を脱ぎくるりに差し出した
「これ、着ておけ」
「え、でも私びしょびしょだし、濡れるよ
それに・・・」
「いいから着ろバカ」
「なっ、バカとは何、ひどくないかな!?」
中々着ようとしないうえ、自分の状態にも気づかないくるりの鈍さにイラついたシンジは押し付けるような形で上着を渡した
怒ってる・・・と思ったくるりはこれ以上怒らせることのないよう、言う通り上着を着た
ずぶ濡れになった自分が風邪を引かないようにと、シンジは自分を心配してくれたんだと思ったくるりは
やっぱり彼は優しいいい子なのかもしれない、と思い直した
「ありがとう、
シンジくんの上着あったかいね」
ニコニコしているくるりに言葉をなくすシンジ
どうしてコイツといるとこうもペースを持っていかれるんだろう
「でも、ちょっと大きいねやっぱり男の子だもんねー」
だぼだぼの袖をパタパタするくるり
多分男女の体格差以前にくるりが小さいんだろう
「で、お前は何の用だ、もう1回言うが俺は困ってない」
「そうそう、それ今回はちゃんと理由があるの
私と一緒に森をでたら、すぐバトル出来るでしょ、どうかな」
「バトルなら、ここでやればいいだろ」
「シンジくんはさ、"フライゴンのトレーナー"とバトルしたいって、言ったわけ
つまりはフライゴンとバトルしたいんでしょう」
「あぁ、それがどうした」
「ここは、森の中
こんなフィールドじゃあフライゴンの性質や素早さを活かすことができない
全力のフライゴンとバトルしたほうが、経験値は稼げると思うよ、ドラゴンタイプに出会うことなんて滅多にないしね」
確かに、全力のフライゴンと戦わないなら意味はないと考えたシンジはくるりと一緒に森を出ることにした
嬉しそうな顔をするくるりはポツリと呟いた
「もっとも、モンスターボール置いてきちゃったから森を出ないかぎりバトルは無理なんだけどね」
そういえばくるりは荷物もモンスターボールも何も持っていない
そりゃあ、荷物を持ったままランチの準備はしないだろうから
当然といえば当然だ
「でもさー、なんだかんだ言ってシンジくんって優しいよね」
「どこがだ」
「だって、私のこと心配して上着貸してくれたんてましょ、それにさっきだって"オドシシに気をつけろ"って忠告してくれたじゃない」
何か勘違いしているくるりに反論しようかとも考えたが
じゃあなぜ上着を貸したのかと聞かれると面倒なことになりそうなので言わなかった
「そういえば、自己紹介してなかったね
私、くるりよろしくね」