Shine
□第6章
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ここはハクタイの森ソノオタウンを通ってハクタイシティへ行くのに必ず通る場所、多くのトレーナーはここで戦力を強化した後にハクタイジムに挑む・・・そうこの二人も同じ・・・
「ハクタイの森かぁ・・・久しぶりだなぁ
あっチェリンボだ、前から欲しかったんだよねーゲットしちゃおうか、グレイシアお願いねっ」
「レイシァ」
邪魔にならないように、とシンジたちがいる場所からすこし離れたところにいたくるり、木の上のチェリンボを見つけ、嬉しそうに指示を出した
コクンと頷くのはくるりの隣にいたグレイシア
この森はかなりの確率でポケモンに遭遇するためくるりは、万が一のことを考えすぐ戦闘態勢に入れるよう、草タイプには相性バツグンの氷タイプのグレイシアを出していたのだ
喧嘩早いグレイシアはくるりの指示を受ける前にチェリンボに牙を向け威嚇し、突っ込んで行った
ビックリしたチェリンボは慌てて飛び退く、勢いをころすことができずにメグはそのまま木の幹にぶつかった
運悪くその木にはスピアーの巣があり、突然木にぶつかってきたメグに怒って襲いかかってきた、しかも元は三匹だったスピアー、最初の三匹が仲間を呼んだのか十匹近くまで増えていた
「もーっ、グレイシア何してるのよ〜、あっシンジくん助けてーッ!!、じゃなくて危ないから逃げてーっ!!」
スピアーから逃げている中前方にシンジが見えたので声をかけるが、よく見ると、シンジの前にはゴースたちが通せんぼしている
「何やってるんだ」
呆れた顔でくるりにむかって呟くシンジ、その隣にはエレキッド
ゴースたちが怒っている理由はわからないが、とにかくこのままではマズイ、前方にはゴース、後方にはスピアーこのままシンジと合流すれば挟み撃ちされたことになる
シンジをくるりの仲間だと判断したスピアーが数匹エレキッドとシンジにむかって襲いかかる、がゴースのシャドーボールに怯んでUターンして逃げていった
その様子を見て安心したくるり、その隣でシンジはスピアーを追い払うほどの威力をもつシャドーボールに感心しているようだった
だが二人共怒ったゴースたちの様子を見てまた険しい表情に戻った、捕まえるにしても何にしても数が多すぎる
「ねぇ、何したの」
「俺が攻撃した奴がリーダーだったらしい、仲間を呼んで襲いかかってきた」
「うっそぉ・・・エレキッドも疲れちゃってるし・・・」
「び、ビリ、ビリビリ!!」
大丈夫だ、とでもいうように首・・・というか頭部を左右に振るエレキッド
息を切らしておいて何が大丈夫なんだ
「大丈夫じゃないでしょ〜大人しくしてなさい
ここはなんとかするから、ほらシンジくんエレキッドをボールに戻して」
「なんとかって・・・何か考えがあるのか」
コイツらをなんとか出来るならもう何でもいい、と鬱陶しそうな顔でゴースたちを見るシンジ、くるりの言う通りエレキッドをボールに戻す
その様子を確認したくるりが一歩前に出る
「ねぇ、怒らせたのなら謝るから、だからもう攻撃してくるのはやめて?」
何を考えたのかゴースたち相手にくるりは退くように交渉を始めた
シンジもその様子に呆れて頭を抱えている
「ね、ほらポケモンもボールに戻したし敵意はないのよだからお願い」
「おい、ゴースが交渉くらいで退くと思っているのか」
「シーッ、ほら来たよ
きっとわかってくれたんだよ」
周りのゴースたちが何か文句を言っていたがリーダーと思わしき、真ん中にいたゴースが周りのゴースたちに何か言って静めた後くるりの方へ笑顔で寄ってくる
なんだ、案外可愛いな、くるりは一瞬そう思った・・・が
ベロンッ
突如ネタァっとした舌がくるりを襲う
「うぅ‼‼ちょっと・・・何するの!!」
いきなり舐められ、背筋が凍るような感覚に襲われ何とも言えぬ表情になった後その感覚を忘れたくてブンブンと顔を左右に振り
ゴースたちに怒鳴るくるり、だがその反応が可笑しかったのかゴースたちは
くるりを取り囲んでケタケタと笑う
「こんの・・・やっぱり可愛くない!!
ひゃあっ!!やだ、そこ舐めないでよっ、ちょっとぉ・・・!」
くるりの反応を面白がって、怒っていたことなど忘れてくるりに群がるゴースたちは足や、腕やらあらゆるところを舐めまわし始める
くすぐったさに耐えかね、足の力が抜けたくるりはバランスを崩し仰向けに倒れる
今だ!と言わんばかりに様子を伺っていたゴースたちも加わりくるりは起き上がることが出来ずにいた
「アヒッ、あっ、ヤダッ、し、シンジくんごめ・・・無理でした!!ヒッ、お願いだからコイツらをなんとかしてぇっ!!アハハッヒアァッ!!」
足をバタバタしながら叫ぶくるりに呆れた顔でシンジがもう一度エレキッドにを出す
「・・・かみなりでゴースを追い払え、アイツに当てると五月蝿いからアイツには当てるなよ」
「ビリッ!」
シンジの指示どおり、くるりには当てずにかみなりを放つエレキッド、くるりだけを避け、他のゴースたちには命中させるとは中々の正確さだ
「あっ、ありがとうシンジくん、エレキッド」
「ビリビリ!!」
くるりにお礼を言われ喜ぶエレキッド、シンジにはお礼どころか褒められることすらないため慣れていないのか口元がヒクヒク動いている、照れくさいんだろうか
「いいから早く立て、何時までそのみっともない姿でいるつもりだ」
「えっ、あっ!!わかったから見ないでっ!!」
ゴースが舐めまわした際に服は捲られ、転んだせいで服も体も砂で汚れてしまっている
シンジに指摘され慌てて、恥ずかしそうに服を整えるくるり、スカートを叩いて砂を落とし怒った顔でゴースたちを睨みつける、ゴースたちのせいでみっともない姿を晒してしまった
舐め回されたことと相まって相当ご立腹な様子だ
「もう、絶対許さない、油断もしない
いくよムウマージ!!あんな奴ら・・・コテンパンにしちゃいなさい!」
くるりが繰り出したのはムウマージゴーストタイプにはゴーストタイプ、セオリー通りである
「紫!!あやしいひかり!!
シンジくん、今度はちゃんとした作戦があるからエレキッドを戻して」
「・・・あぁ、今度こそ信じていいんだな」
「もちろん」
くるりの真剣な眼差しを信じて、エレキッドを戻すシンジ
シンジがエレキッドを戻したこと、そしてゴースたちが混乱したことを確認しくるりがムウマージに指示を出す
「ほろびのうた!
一気に片付けるよ」
「ほろびのうた・・・随分厄介な技を覚えてるんだな、そのムウマージ」
「この子のお得意の技なの!」
顔を歪めるシンジにパチンとウインクしてみせるくるりと、ムウマージも技を決めた後くるりの真似をして可愛らしくウインクをした
可愛らしくウインクしているが、使っている技はおぞましいものだ
ほろびのうたをくらったゴースたちはあやしいひかりのせいでふらつきながら、森の奥へと逃げていった
「お疲れ様。久しぶりのバトルだったけどスピードは落ちてないみたいで安心した!」
「マァジマジマージッ」
褒められて嬉しそうにその場でくるくる回り始めるムウマージをボールに戻しシンジの方を向き直す
「で、戦力強化はどうだったの?」
「・・・そろそろ、行くか」
「うん、そうしよう
ハクタイシティはすぐそこだよ」
森を抜ける道を二人は並んで歩き出した