Shine
□第7章
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「天空に舞え、ガブリアス」
シロナの初手はガブリアス、ガブリアスは彼女のパートナー、相当手強いはずだ
「うっわぁあガブリアスだぁ・・・!」
ガブリアスを見るなり目を光らせるくるり
なにしろくるりはドラゴンタイプが大好き、そして現在自分もガブリアスを育てているため、愛着のあるポケモン
シンジに負けて欲しいわけではないが、ガブリアスの負けるところは見たくないくるりは複雑な気持ちになっていた
「チャンピオンはガブリアスか」
ガブリアスを見るのは初めてらしくサトシが図鑑を開いた
それを見てくるりも、アッと何かを思い出したようにモンスターボールを取り出した
そして
「ガブリアス、チャンピオンのガブリアスのバトルをアナタも見ておこうか」
モンスターボールからガブリアスを出した
「へぇ、こっちに来てからガブリアス捕まえてたの」
ときらりが聞いた、何しろこのガブリアスはきらりも見たことのないポケモン、ということはくるりが一人でシンオウを旅していた頃に捕まえたポケモンという事になる
「うん、でも進化したのは結構最近だから進化してからバトルはまだあんまりしてないの、
だからシロナさんのガブリアスの戦いをしっかり見て私も疾風も勉強しなきゃ!」
そう言ってシロナのガブリアスをじっと見つめるくるりとガブリアス、ガブリアスは同じガブリアス同士何か惹かれるものがあるのか、くるり以上に釘付けになっていた
チャンピオンのガブリアスに対してシンジが繰り出したのはヒコザル、もちろんギャラリーは相性の悪いヒコザルを出したシンジのことを叩き始める
これには、対戦相手のシロナも目を丸くしていた
シロナに先攻を譲られ、ヒコザルの攻撃からのスタートとなった、ヒコザルのほのおのうずにサトシたちが驚きの声を上げる、サトシたちと戦った時には覚えていなかったわざだ、驚くのも無理はない
それなりの威力をもつほのおのうずだが、やはりタイプの相性の悪いガブリアスにはあまり効いていない
続けてヒコザルはあなをほるで地面に潜る、ガブリアスも、ほのおのうずの炎を身に纏ったままあなをほるで地面に潜った
先に地中海 に潜ったのはヒコザルであったがやはり、ヒコザルとガブリアスではレベルの差が段違い、先に地面から飛び出してきたのは炎を纏ったガブリアス、続けざまにガブリアスにはじき飛ばされたヒコザルも地面の上に出てきた
やはり、レベルの差がかなりあったこととそして相性も悪かったことからヒコザルは一撃で戦闘不能状態になってしまった
ヒコザルを戻し、「やはり、こんなものか」と吐き捨てるシンジの声が聞こえたのかシロナの眉が一瞬ピクリと動いた
いつものシンジを知っているくるりやサトシ、きらりもそれが聞こえたらしく
サトシときらりは不愉快そうに顔を歪め、くるりはため息をつき呆れた顔をする
次にシンジが繰り出したのはマニューラ地面、そしてドラゴンタイプの両方に相性のいいこおりタイプを持つマニューラなら、ガブリアスでもそれなりにやりあえるかもしれない
レベルの差をタイプの相性で埋めようと言うわけだろうか
マニューラはふぶきを繰り出すがガブリアスは翼でガード、それほど苦痛にはなっていないようだ
続いてガブリアスは素早く高く飛び上がりドラゴンダイブでマニューラに迫るしかし、マニューラは一歩も動かない
「マニューラは何故逃げないんだ」
「逃げない、じゃない逃げられないのよ」
サトシの疑問にくるりが答える、それに付加するようにタケシがドラゴンダイブの説明をしてくれた
・・・もしかすると、タケシくんさえいればポケモン図鑑なんていらないんじゃないかな、なんてタケシの丁寧な説明にくるりは馬鹿な事を考えていた
くるりが馬鹿な事を考えている間にもガブリアスはどんどんマニューラに近づいていく、シンジは、マニューラのれいとうビーム対抗としたが、ガブリアスには全てかわされてしまった
「あのガブリアス・・・速い」
ガブリアスの俊敏な動きにシンジの応援も忘れてつい見とれてしまったくるり、隣にいるガブリアスもその動きをじっと、見つめている
シンジの3番手はヤミカラス、このポケモンもまたマニューラ同様サトシたちははじめて見るポケモン、次々と出てくるシンジのポケモンたちに驚いているようだった
確かに、今までのバトルではエレキッドかヒコザル、あとはすぐに逃がしてしまったマリルリとムックル
サトシたちの見てきたポケモンはエレキッドとヒコザルの2体だけなのだ、一緒に旅をしているくるりは見慣れているので、ああそういえばサトシくんたちの前で出すのは初めてか、と他人事のように考えていた
いつもは、頑張ってくれたポケモンに声も掛けないシンジに対して怒るきらりやサトシだったが、今日はそれどころではないらしい
いつもならちょっとしたことですぐにシンジにいちゃもんをつけるきらりだが、今日は不気味なくらい静かにバトルを見ていた
ヤミカラスの素早さは中々のもので黒い霧はかわされたがすぐにガブリアスの後ろに回り込んでゴッドバードを撃ち込む、しかし、ガブリアスの素早さも負けてはいない、すぐにギガインパクトでゴッドバードにぶつかる、今度もまた、ぶつかり合いを制したのはガブリアス
ヤミカラスは倒れてしまったが、バトル中にシロナがガブリアスにギガインパクトを指示したとき、シンジの表情が一瞬変わったのをくるりは見逃さなかった
「・・・なるほどね」
ポツリと呟いたくるりの言葉を聞き漏らさなかったサトシが
「なるほどって何がだ」
と聞いてくる、それを聞いたタケシも
「もしかして、シンジの狙いががわかったのか」
と、聞いてきたそれにサトシやヒカリも「何だって」「本当に?教えて」と聞いてくる
「私の考えてるとおりなら、すぐにわかるから・・・見てなよ」
とだけ返すくるりにヒカリたちは冷たいなーと感じた
ヤミカラスをボールに戻し、笑うシンジを見てシロナの表情が少し歪んだ
「くるりの言う通り・・・シンジにはまだ何か狙いがあるらしいな」
とタケシが言うと、「それで、三体とも一撃でやられたのに笑ってられるのね」とヒカリが納得する
シンジの4体目はドダイトス、ここにきてドダイトスを出したということはくるりの言う通り、何か狙いがあり一気にガブリアスを倒そうというつもりらしい
「ドダイトス、ギガドレイン」
ドダイトスのギガドレインを、ガブリアスはかわすことができなかった
「決まった」
「でもガブリアスはどうしてかわさなかったの」
ヒカリとサトシが驚く中、タケシがアッと声を上げた
「そうか、これがシンジの狙いだったんだ」
「え?」
タケシの言葉に首を傾げるサトシ、ヒカリ、きらり
その三人にくるりが説明する
「ポケモンの技には大きなダメージを与える代わりにデメリットを伴うものがあるの
例えばボルテッカーみたいに、自分もダメージをうけたり、ソーラービームみたいに発射まで時間がかかって隙ができる、とかね
ギガインパクトもそういう技で使った後少しの間動くことが出来なくなるの」
「つまり、ギガインパクトが出るまでほかのポケモンで凌いでいたんだ、ドダイトスのギガドレインを確実に確実にヒットさせガブリアスの体力を奪うために」
「アイツらしいといえば・・・アイツらしいやり方ね」
気に入らないなと付け加えるきらり
その意見にはサトシも同意のようだ
「ギガインパクトは確かに強力です、だがそれはガブリアスの弱点でもある」
その言葉にシロナも厳しい表情になっている、シンジの戦い方に不満があるのかそれとも・・・
ギガドレインで体力を吸い取られ、フラリと膝をつくガブリアス、その隙を逃すことなくハードプラントで畳みかけるドダイトス
これが決まれば勝負はつくだろう
地面の上にから出てきた数本の植物たちがまっすぐに伸びてゆきガブリアスを襲う
激しい砂埃が吹き荒れガブリアスを隠す、観戦していたギャラリーの方にも砂埃が飛ぶ、サッと背を向け翼で砂埃からくるりを守るガブリアス、シロナのガブリアスの戦いを見て、翼を使う防御の方法を学んだようだ
「ありがとう」
砂埃が飛んでくるのが静まると、ガブリアスにお礼をいいながら体を撫でるくるり撫でられたガブリアスも嬉しそうにしている
すぐにフィールド上にいるガブリアスの方に視線を戻すと、ガブリアスは翼でハードプラントを全て受け止めていた
「なっ・・・!?」
「・・・!!」
その光景にくるりも目を丸くした、あのドダイトスのハードプラントを・・・受け止めた・・・?
シロナは微笑み静かな声でガブリアスに
「かわらわり」
と指示を出した、ハードプラントプラントを受け止められ、驚いているドダイトスの上をとるガブリアス、輝く翼がドダイトスを襲う
なんと、恐ろしいことにガブリアスのかわらわりはあの巨体のドダイトスをひっくりかえしてしまった
「こ、これが・・・チャンピオンの力・・・」
圧倒的な力に驚くサトシ、ガブリアスの力に驚いているんだろうか目を大きく見開いていた
「ここまでにします」
ドダイトスを倒され諦めたのか、シンジがドダイトスをボールに戻し、そう言った
シンジが他の人に負けるところを見たのはこれが初めてだ・・・くるりもショックを受けたらしく、黙って唇を噛み締めていた
「わかったわ、ガブリアスご苦労様」
「ガーブ」
シロナの言葉にガブリアスはバトルの時のあの力強さからは想像できない、優しい目で返事をしていた
いつもならその愛らしい表情(くるり曰く)にメロメロになるくるりなのだが、今日はそういう気分にはなれなかった
ガブリアスの圧倒的な力に黙り込んでいたギャラリーも、ハッとしたように「ほーらなだから恥かくだけだって言ったんだ」「ざまぁねぇぜ!!」とシンジの事を何人かが罵り始め、それがだんだん大きくなり笑い声にかわっていった、それを聞くくるりはグッと力を込め拳を握りしめ唇を噛み締めていた、
その表情は珍しく怒りの色に染まっていた
しかし、くるりが声を荒らげる前に「笑うな!!」と叫んだのはサトシだったそのままサトシはシンジのそばに走って行く
それに続くようにくるりも顔を上げ、慌ててシンジの元に駆け出した
そしてシンジの手を取り「カッコよかったよ」と一言言って微笑み、後ろをチラッと見てから「ほんっと、罵倒するしか脳がないような誰かさんたちよりずっとね」とシンジを馬鹿にする者達に珍しく嫌味を吐いていた
それを言われたギャラリーたちも、反論しようとしたがくるり、とくるりの隣に来たガブリアスに強く睨まれたせいかそれ以上は何も言わなかった
「どうしちゃったのよ・・・」
「ほんと!サトシったらどうしちゃったのかしら」
いつもはシンジの、庇うなんて・・・と不思議そうな顔をするヒカリときらりにタケシが微笑む
「堂々とチャンピオンに挑んだシンジに何か感じるものがあったんだろう」
と言うタケシにきらりは
「違う違う、私が言ってるのはお姉ちゃんの方よ、いつも温厚なお姉ちゃんが嫌味を言うなんて・・・これもきっとアイツのせいね」
と怒っているようだった
「ああ、そっちな・・・」
「あと一歩だったのにな、シンジ」
後ろから声をかけてくるサトシを一瞬見はしたものの、その言葉に返事をするわけでもなく「鍛え直してまた挑戦します」とシロナに言い隣でずっと自分の手を握るくるりのことも一瞬見つめまたシロナの方に向き直った、「楽しみにしているわ、次に出会った時はくるりさんのガブリアスともぜひ」とシンジだけでなくくるりにも声をかけてくれたシロナに
くるりは「ハイ!!」と嬉しそうな声で返事をして、ずっとシロナの方を見続けて動かないガブリアスに「ホラ行くよ」と声を掛けてからボールに戻して「では」とシロナに頭を下げるくるりと共に一礼するとその場を立ち去ろうとするシンジ
「あれ、どこ行くの
ポケモンセンターは・・・」
「おい、ポケモンセンターはそっちじゃないぞ」
という、二人の言葉も無視して歩き続けるシンジ
くるりが上着を引っ張って止めようとする前に「待ちなさい、シンジくん」と言うシロナの呼びかけられ、足を止めるシンジ
「バトルを終えたポケモンをポケモンセンターに連れていくのはトレーナーの義務よ」
「・・・はい」
年上の人にはちゃんとしているシンジ、今度は素直に返事をした