Shine

□第7章
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「シンジくん、治療は終わったわよ」


「ありがとうございます」


「それにしても貴方のポケモン達はよく鍛えられているのね、特にドダイトスはかなりのものだわ」


「俺が最初に貰ったポケモンです」


「へぇ・・・そうだったんだ」


シンジにしては珍しく、いつもより口数が多いがそれはきっとシロナがいるかららしく、タケシの「ナエトルから育てたのか」という質問にはいつものように素っ気なく「ああ」と答えていた


「それからホウエン、ジョウト、カントーとリーグを回りましたが優勝はまだです

マニューラとヤミカラスはその旅の途中でゲットしました」


「ヒコザルは?」


「ヒコザルはシンオウに戻ってからだ」


「シンオウに戻ってから、それは凄いわ」

「でも、ガブリアスだけでも倒すという目標は達成できませんでした」



その言葉にサトシが反応する



「お前、もしかしてギガインパクトがくるまで、何体倒れてもいいと思っていたのか・・・?」


サトシの声音が今までとはちがうものになる、サトシがこういう声を出したあとは、大抵二人は揉める。それを知っているヒカリやタケシ、くるりは呆れた顔でため息をついている



「そうだ」



「じゃあポケモンたちの気持ちはどうなるんだよ

そんな勝ち方したって、それはお前だけの勝ちじゃないか!!」


「どんなかたちでも、勝ちは勝ちだ」


またしても、いつものごとく考え方の違いから対立する二人、どちらかが互いの考えを少しでも理解しようという姿勢をとればこういうことも、少なくはなるんだろうが、シンジに限ってそれはないだろうし、サトシも熱くなりやすい性格だからそれは無理だろうけど



「違う!!ポケモンたちと一緒に頑張って勝つのが本当の勝利だ、何でポケモンたちを大事にしないんだ!!」


「甘やかすことになる、あのヒコザルだってもっと強くなれるはずなのに、まだ力を出しきれていない」


「力を引き出したいんならもっとヒコザルを信じろよ!!そうすりゃ答えてくれる」


「ぬるいな」


「何ぃ!!」


「もう、やめなよみっともない・・・」


「くるりはなんでシンジの肩ばっかり持つんだよ!!」


「そうよ、サトシくんの言ってるのは正しいじゃない!!」


くるりが止めに入ったことで、きらりまで入ってきて事態はさらに収拾がつかなくなる


「肩を持つとか持たないの話じゃないの、今のサトシくんは自分の意見を一方的に押し付けてるだけ、自分とは違う考え方でもちゃんと利点はある、そこはちゃんと受けとめないと、自分の考えだけが全て正しいっていうのはおかしい」



「それは、アイツにも言えることでしょ、なんでサトシくんばっかり責めるのよ」



「確かにそう、シンジくんももっと他の人の意見に聞く耳を持つべきだと思う。


でも今のは意見っていうには上からだったし、シンジくんの考えを完璧に否定した上での話だったそんなんじゃ誰だって聞く耳なんて持たないの」


「言い方を替えたところで、結局聞く耳なんて持つ気はないんなら一緒でしょ!!」


「結局、くるりはどっちの意見に賛成なんだよ!!」


「どっもどっち!!」


「どっちもどっちって・・・なんだよそれ」



「だって、別にシンジ君みたいに作戦を立ててバトルするのは悪いことじゃないし、サトシ君みたいにポケモンと一緒に強くなるっていうのもいい事だと思う

だからどっちが悪いなんてのはないって私は思うな」



そう言うとくるりは優しく微笑んだ


だが、サトシはまだ納得していない様子だ



「・・・ポケモンバトルで大事なのはポケモンとの絆だ!!それが無くて、強くなれるもんか!!」


「お前はお前で好きにやれ俺は俺のやり方で強くなる」


「強くなる・・・か」



サトシ、きらりそしてシンジ、くるりの四人のやりとりを見ていたシロナがポツリと呟いた



その一言で、四人は言い争っていたことも忘れ、シロナの方を見る


「四人とも、ちょっとつきあってくれない?」




****



シロナにつれられて来たのは先ほどバトルをした自然公園にある石板のところ



「あなたたちにどうしてもこれを見てもらいたかったの」


石板に書いてある文字は、今使われているものとは違うもので、なんと書いているのかはくるりたちにはわからなかった


「すべてのいのちは べつのいのちとであい なにかをうみだす」



シロナが読み上げた文字に四人はポカンとしたり、小首をかしげたり、それぞれ様々な反応をとっていた


「私も昔は勝つことで・・・強くなることで頭がいっぱいがむしゃらにポケモンを鍛えていたわ。


でも、ポケモンにはたとえ同じポケモンでも個性がある。だから私は彼らのことをよく知りたいと思った。そして多くのポケモン立ちと出会い深く通じあううちに何か新しいものが生まれてくると、気づいたのよ


人とポケモンの出会いも、人と人の出会いも同じ」


シロナはくるりたちの方を振り返り笑みを浮かべて続けた


「今日のこの出会いはきっと、私たちの心に新たなものを生み出すわ。あなたたちの言う強さに繋がる何かがね」


「出会いが生み出す、何か・・・」



くるりがシロナの言葉を復唱するように呟き、石板とシロナを交互に見る、そしてサトシ、きらりとグルっと周りを見渡しシンジの方を見つめた

シンジもまた一瞬とサトシ、きらりのいる方を見たが、すぐに目をそらしくるりの方を見つめた

シロナの言葉に何か感じたらしいが、照れくさくなったくるりが「えへへ、ちょっと照れくさいね」とふにゃあっと笑うとすぐに目を逸らしてしまった


シロナは石板を見つめて


「わたしのポケモンを知りたいという気持ちは、今では伝説のポケモンディアルガとパルキアにまで広がっているの

いつかあの二体に会って、ポケモン世界の根源に触れてみたい・・・」


「伝説のポケモンか・・・」


「出会えるといいですね」


「ええ・・・」
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