-short story-

□鼓動
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ある雑誌のインタビューで、「メンバーの中で恋人にするなら誰??」という何ともありきたりな質問をされた。

私は二つ返事で「ちゅり!!」と答えたわけだが、それは真実であって真実ではなかった。

そもそも軽々しく口に出来る恋が存在する筈がない。

葛藤や自己嫌悪や嫉妬……様々な泥濘の中で気付く愛しさを人は恋と呼ぶのだろう。

私からちゅりへ対する思いは分かりやすいほど単純で、純粋だった。

プラトニックな恋と捉えることが出来るかもしれないが、本気では無いと捉えることも出来た。

もっとも…メンバー同士、女同士なのだから本気で恋をしたところで傷付くだけだと知っていた。

大丈夫、
今は恋愛禁止条例を守ろう。

ちゅりへの、この純粋な愛しさを疑似的な恋愛に置き換えて、そして…




「珠理奈、何考えてんの??」


私の思考は
突然の玲奈ちゃんの発言に止められた。


「…んー、と…スゴく難しいこと…??」

「何で疑問系なんだよー」


「何考えてたんだろうね、私」


「何それー!?…変な珠理奈」


くしゃっと笑った玲奈ちゃんの、その笑顔を見た瞬間、高鳴ったのは私の鼓動。


-どくん、-


「…ッ…」


「珠理奈!?どうしたの!?どっか辛いの!?」


「…わからない…」


心配そうな玲奈ちゃんの瞳に吸い込まれそうになる。

もう、この胸は息をするのも苦しいくらいに何かがつっかえていて、だけどそれを吐き出すことは出来ない。


「……そっか、珠理奈、あんまり無理しちゃダメだよ??珠理奈は、いつもそうやって自分を壊しちゃうんだから…」


あぁ、どうして玲奈ちゃんは私の一番弱いところを知っているんだろう?

何かを口にすれば全てが崩れてしまう気がして、私はただ頷くことしか出来なかった。


「じゃあ、また明日」


トドメとなる一撃。



玲奈ちゃんはそっと私の頭を撫で、私の前から去っていった。




「…また…明日…」


玲奈ちゃんが撫でてくれた感触をなぞりながら、私はひとりそう呟くしか出来ず。

うるさいくらいの鼓動の中で、恋なんて出来やしない自分が悔しくて…




堪えきれない涙が溢れた。















-END-

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