-short story-
□絆の証
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「…今日も気合い入れて行かなきゃね、珠理奈!!」
「あたり前田のクラッカー!!」
「…うん、珠理奈…だんだんたかみなさんっぽくなって来てるよ!!」
「…それ、褒めてる…??」
「うんっ!!」
到底褒め言葉とはとれないが、玲奈ちゃんの純粋な笑顔に負けて私も笑う。
と、いうか、玲奈ちゃんの笑顔を前に虜にならない人間が存在するのだろうか?
少なくとも私は、もう逃れられる術を持ち合わせていないような気がする。
まあ、そんなことは今はどうでもいい。
「最初とか、緊張するわ〜!!…しかも『枯葉』だから余計に…」
「なんで〜!?」
「だって、玲奈ちゃんの曲だもん…いい加減にはやれないよ」
「…なんか、ありがとう…」
「へへっ…//」
そんな会話を交わしているうちに舞台袖の時間は過ぎ去り、『overture』が流れ始めた。
一気に上がる劇場内のボルテージ。
そういえば、玲奈と珠理奈が揃ってのS公演なんて久々だからな、って湯浅さんが言ってたっけ。
「…珠理奈!!」
玲奈ちゃんに手招きされ、いつもの儀式が始まると分かった。
「…玲奈ちゃん、思いっきりよろしくね」
「当たり前じゃん!!珠理奈、完全燃焼しようね!!」
「W松井、久々のS公演…ここで燃え尽きなきゃ、どこで燃えるポイントがあるのさ」
「ふふ、…いくよ…」
「うん、よろしく…」
「「SKE〜48!!!!」」
-パーンッ!!-
背中に残された真っ赤な手形が、私と玲奈ちゃんとの絆の証。
初めての公演の時、二人だけでAKBさんのライブに出た時。
どちらかが緊張してしまった時。
私たちはこうしてお互いの背中を叩きあってきた。
そこに、二人の軌跡があり、そして私たちはそこに全てを賭けてきた。
そして、これからも…
「玲奈ちゃん…」
「ん、何??」
(…玲奈ちゃんがいてくれて、本当に良かった)
「…え??…何て…??」
「ううん、何でもない!!」
『枯葉のステーション』
私の大好きな曲。
玲奈ちゃんの大切な曲。
そのイントロが流れ、会場のボルテージは早くも最高潮へ。
そのイントロの中で、私は玲奈ちゃんが歌う姿を確かに思い浮かべていた。
確かに見ていた。
そして、大好きな人の大切な曲を歌い始めた。
(玲奈ちゃんに出逢えて良かった……ホントだよ…?)
-END-