-short story-

□線分
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世間の人たちは私たちを拘束する。

それは良い意味でも悪い意味でも同じだ。

そしてある意味では私たちはその拘束を必要としているのかもしれない。

即ち、それは私たちが「アイドル」であり続ける為の抑止力だ。

けど、私たちだって結局は人間だ。

四六時中、いつでもどこでもずっとアイドルでいることなど出来はしない。

時に、自分を見失わないように、自分らしくあることが大切なんだ。


だから、私と珠理奈はここにいる。


ここは、この部屋は、私たち以外は誰も入れない絶対的な領域だ。

隔離、とまではいわないが、それに近い意味合いを持った空間だ。

時折、どちらからともなく連絡を取っては笑う。




「待ってるよ。」




それだけで意味が通じ合う、そんな関係とはきっと素晴らしいものだと思う。

この事実が公になれば、全ては崩れてしまうのだろうか?

平衡台の上を歩いているように足元がおぼつかない二人の関係。




「…もし、全部なくなっちゃったら??…そんなの決まってるじゃん!!…私と、玲奈ちゃん。二人で新しいものを作ればいいんだよ!!」


「……二人で…??」


「…二人で…!!」




きっと交わした言葉に嘘はないだろう。
二人なら…世間の言い方に合わして「W松井」なら、きっと出来ないことは何も無いだろう。

珠理奈といると、いつもなぜかそんな確信の無い確信が湧いた。




「…もう、引き返せそうにないよね、私たち…」




夕暮れ。

私たちの他には誰もいない部屋。

聞こえるのは表で遊んでいる子供たちの声。

そして、珠理奈の鼓動。

私の鼓動。




珠理奈がニヤリ、と笑う。

私の腰に手が回される。

そのまま、少し硬い安物のベッドに押し倒され、そしてゆっくりと時が止まる魔法を唇にかけられた。

そのまま、瞳のすぐ前で珠理奈は笑う。



「…今なら引き返しても、私は構わないよ??」




私はゆっくりと首を横に振った。

そこには、躊躇いも計算も無かった。

ただ、純粋に私は珠理奈を求めていた。
そしてそれは珠理奈も同じだった。




「…ここから先には、誰も入らせない。……私と玲奈ちゃん、二人だけだ。」



















(この部屋が、私たちを入れ換える線分。
そして私たちはその線の内側でのみ、互いを愛し、求めることを許されていた。)
















-END-

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