-short story-

□銀河鉄道の夜
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「すいません!!新宿のAスタジオまでお願いします」


「あいよ!!」




マネージャーさんの車を捕まえられず、ギリギリでタクシーに乗り込んだ。

今日も私の一日は忙しい。

そして、
私は幸せだった。

毎日が忙しいとは良いことだ。

ただ…
少しだけ…疲れていたけれど。




「いやー!!…AKB人気はまさにとどまることを知りませんなぁ!!」


「…そう…ですか…」


「この前も何とかっていうメンバーさんを乗せましたがねぇ…いやぁ…綺麗だったなぁ…私があと40年若ければねェ!!」



そう言って笑う、人がよさげな運転手さん。

だけど、
私はその相手も出来ないほどに疲れていた。

適当に相槌を打ちながら窓の外を見ていた。

真っ昼間の街、その青い空が眩しかった。




「…いやぁ…しかしまぁあれですねぇ…どこもかしこも不況の波で…私のとこももう全然ですわぁ…」


「…はぁ…そうですか…」


「今、日本で景気が良いのはAKBさんくらいですよねぇ〜…羨ましい限りですよ…」




私、SKEなんですけど…と突っ込みをいれるのも面倒なので黙って頷いておいた。

しかし…
よく喋る運転手さんだなぁ…

ふぅぅ、と息を吐きながら再び窓の外を見ると、まだ真昼なのに街がだんだんと暗くなっていく。


(…えっ…!?…何コレ…日食??)


「…いやぁ…しかしねぇ…ホント、私としては……………」



運転手さんの声が徐々に聞こえなくなり、
私は身体に、
何か引っ張られるような感覚を感じた。




******




『銀河ステーション…銀河ステーション…お降りのお客様は……』




気がつくと私は木造の硬い椅子の上に座っていた。

天井には小虫が群がる白灯。

まるで、レトロな鉄道のようだった。

そして、タクシーに乗っていたはずの私が、なぜこんな場所に居るのか見当がつかなかった。




『…発車時刻となりました。…サウザンクロス行き銀河鉄道、まもなく発車いたします。…』




ギシギシという音がして、まもなく列車が動き始めた。

私はただ、窓の外を眺めていた。

そこはもう別世界だった。

赤や青や橙色に光り輝く星たち。

それは今まで見てきた、どんな星や宝石よりも美しく、壮大だった。

広大な銀河の中を飛び立ってゆく銀河鉄道の中で、その中で私は言葉もなく、ただただ窓の外を見ていた。





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