-short story-

□銀河鉄道の夜
2ページ/3ページ





「…座っても…いい??」


「…あっ!!…どうぞ……って……えっ??」




相手の顔を見て、私の声は思わず裏返った。

そしてそれは向こうも同じらしい。




「…あれ〜??…私だ〜…」


「…えっ……嘘…!!」


「あははっ!!…マネすんなよぉ〜!!」


ケラケラと笑う『私』の姿形に、私は倒れそうになっていた。




******




「あの…あなたの…名前は…??」


「松井玲奈ー!!」


「あ、あのっ…!!…私も…松井玲奈なんです…!!…けど…」


「あははっ!!…変なのー!!…でも、皆は私のこと、名前で呼ばないよー…皆、ゲキカラって呼ぶの!!」


「…ゲキカラ…さん…」


「…そーだよー!!」




何だか、ひどく懐かしい感じがした。

目の前に居るもう一人の「私」は、遠い昔、何処かで失くしてしまった私のようだった。

(…遠い昔??)




「…ゲキカラさんは…どうしてここに居るんですか??」


「…んーとね……人探し…」


「…人??」


「うん、優子さん。」


「優子さん…??」


「ケンカがめちゃんこ強くて、カッコよくて、…あったかい人。」




そう呟いたゲキカラさんの顔は、どこか寂しげだった。




「…見つかると良いですね…!!」




私は少しだけ優しく笑った。

そんな私の顔をゲキカラさんはまじまじと見ながら、「やっぱり私だー…」と何度も首を傾げていた。

…が、次の瞬間。




-ちゅっ。-




一瞬、何が起きたのか全く理解出来なかった。

唇に感じた温もりがゲキカラさんのものだと分かった時、私はとんでもない禁忌を犯してしまったのだと思った。

しかし、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

私はその時、純粋にゲキカラさんが可愛いらしく、愛しかった。




「……何っ…です……か……?」


「…玲奈…人が人を好きになるって…どういうコト…??」


「…好き…??」


「……玲奈……もっと…ちゅーしよ??………」




赤、青、黄、橙、…
星廻りの銀河の中をただ走る銀河鉄道。

その中で、
私はゲキカラさんに魅せられ、甘く毒されていった。

(あなたは追憶の中の私…??)




「…はっ…ぁ…!!………げき…から…さっ……!!」


「…玲奈……幸せ??」


「……ハァ…ハァ……ゲキカラ…さんっ…!!」








私はゲキカラさんの身体を強く抱き締めた。

そして、瞳を閉じて、そっと囁いた。

(新世界交響楽)




「……好きですっ………ゲキカラさんっ……!!……ゲキカラさんっ……!!!!」




そっと瞳を開けるともうそこにゲキカラさんの姿は無く、

私は小さく、声にならない声をあげ、窓から身を乗り出し、
ただ色とりどりに光る銀河ばかりを見つめ、やがて星の涙を流し始めた。






.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ