わんぴーす
□こいのうた
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どれだけ一緒にいても、掴めないし、読めないし、わからない。
どれだけ私が彼を求めても、その気持ちは返ってこない。
行き着く場所もなく、失う勇気もない。
それでも私は、誰よりも彼の側にいたい。
「すっげーな!きらきらしてる!」
「きれいだねー…」
皆が寝静まったころ、私たちは展望台に二人きり。真っ暗でどこまでも続く夜空に、ありったけに散りばめられた星たちを眺めていた。
「…明日の朝ごはんなんだろ」
「骨付きチキン!」
「…朝からがっつり」
星を一緒に見ようって約束をして、二人で一緒に見て…。けどそれは、ルフィは私とじゃなくてもいい、楽しいことがあれば、わくわくすることがあれば、それは誰とでも良いのだ。きっと。これは卑屈になっているわけではない。
何ものにもとらわれない、そんな自由な彼が大好きで。だけどその目にうつりたいといつからかワガママな自分が生まれ、そこに気づいてしまった時点で私は負けなのかもしれない。
「手ェ伸ばしたらさ、星に届かねェかな」
「……届くんじゃない?」
「よし、やってみるか!いくぞー…」
「ちょ、ちょっと待って!」
「っうわ!」
空に手を伸ばそうと立ち上がったルフィを思いっきり引っ張ってしまい、二人して床に倒れこんだ。
「悪ィ!大丈夫か?」
「だ、大丈夫。…それより、手、伸ばすの今はやめておこうよ」
「なんでだ?」
「あの星に辿りつくには、多分何億何千年もかかると思うから」
「え!!そうなのか!?」
「うん。だから、もう少し時間がある時にしよ」
「ししし、そうだな!そんなにたったら俺は海賊王になっちまう」
自信あふれるその台詞をきいて、なんだかまた少し彼が遠くなった気がした。
特別を一番望んではいけない人に望んでしまったのだ。
自分なんかが彼の夢の邪魔をしてはいけない。きっと、恐らく、多分、私のこのどうしようもない程の彼への想いは、生涯口に出すことはないと思う。
誰にも、知られることはないと思う。
「ルフィー」
「んー?」
「ルフィはさ……、何を見てるの?」
「ん?どういう意味だ?」
「……わかんない」
「なんだそれ?変な奴だなー」
何を考えているの、誰を愛しているの、誰のために、傷つくの。
聞いて全部全部知りたい。けど、彼を失いたくない。彼の隣にいられる今を大切にしたい。
臆病な私は、彼に何も聞けない。
「こんなにいっつも一緒にいるのになぁ」
「なにがだ?」
「ルフィって本当、鈍感」
「どんかん?」
私だけじゃなくて、誰の目から見ても彼はきっとキラキラと輝いてる。目の前のものを温かく見つめる瞳、もっとずっと先を真っすぐに見据える瞳。
そんな彼が、ちっぽけな私の持っている小さな小さな恋心なんかに気づくはずがないのだ。
だけど、そんな彼だからこそ好きなのだ。
「※ ※ ※」
「ん?」
二人で寝転んだまま空を眺めていると、名前を呼ばれたから顔をそちらに向ける。すると、真っ直ぐにルフィがこちらを見ていた。
ばーか。ほんと、ずるい。
「俺さー…」
望みを言えばいくらでもある。
けどそんな汚いものは見ないふりをして、閉じ込める。
誰にも知られることがなくても、きっと私は彼のことを想い続けるだろう。
どんな形であれ、心からは消えてくれそうもない。
あなた以上は、いないのです。
「※ ※ ※といると、すっげー幸せ!」
素直な口からでたその言葉は、私をいとも簡単に幸せにしてくれる。
私の心は、彼から逃れることはやっぱりできないようだ。