わんぴーす
□怖いのはきっとふり
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「あのさ……なんか最近怖いよ?」
「怖いって何が?」
「あなたが」
隣に座るルフィをじっと見つめる。
ルフィも私のことをじっと見つめる。
あ、笑った。
「ししし!」
「いやいや、なんだこれ!」
最近は気がつけば横にいるし、気がつけば触れていると気がついた。
なんだか最近のルフィは、ルフィなようでたまにルフィじゃない。けどルフィはルフィだし。
……いやルフィはルフィなんだけどさ。
私の自意識過剰かと思ったけど、勘が間違っていなければ、彼のスキンシップはまるでアレな感じがする。
「なにが怖いんだ?」
「うーん……。いや、自分で言うのもなんなんだよね」
「?」
「私はルフィのこと…好きだよ?」
「俺もだぞ!」
「……うーん、そうだよね。そりゃそうなんだけどさ、」
「?」
ルフィは、この船の船長であり仲間だ。
男とか女とか、そんなものじゃなくて、寧ろルフィを性別で表したら「男」というより「漢」だ。
ザ・少年漫画って奴だし、恋とか愛とか興味もなくて知りもしなさそうだし。
「ていうのはわかってんだけど…」
隣に座るルフィを見ると、私の手のひらを見ながらマッサージするように押して見たり、繋いでみたり、自分の手相と比べて見たりと楽しそう。
いや触りすぎだろ。距離感無視だな、心の。
「それ楽しい?」
「お前、手のシワうっすいなー!死ぬのか?」
「死なんわ!、ていうか触りすぎだしっ」
異性を感じてしまうルフィがちょっと怖いって感じてしまう。
そりゃ好きだけど、そういうのじゃないから、みたいな。
もういいでしょ、とルフィから手を離した。
この際だから開き直って言うわ。
この人、私のこと好きすぎる。
「※ ※ ※、昼寝しよう!」
「私部屋で本読んでくる。おやすみルフィ」
「じゃあ俺も本読む!」
「いや絶対ウソ!読むわけないじゃんルフィが!」
「お前失敬だなー、俺だって本くらい読む!」
「……別にいいんだよ?私に合わせなくて」
一緒に遊ぶのが当たり前だったけど、意識し始めてしまえばなんかやりずらくて、ちょっと距離を置こうとしてしまう。
じゃなきゃこいつ、トイレにまでついてくるし。
「お昼寝してていいし」
「俺がそうしてぇんだ!」
「…だって文字とか嫌いじゃん。なんでルフィはそんなに私の隣にいてくれるの?」
「んー……わっかんねぇけど、最近お前といるだけで、なんかすっげー嬉しいんだ!」
「……ズキュン」
にしし、なんて笑うから、一瞬かわいいなんて思ってしまった。
楽しいじゃなくて嬉しいっていうあたり、…なんか私も嬉しいじゃないか。
「仕方ないなー。…よし、お昼寝しよ」
「いいのか!?」
「うん。私もルフィといると嬉しい」
「一緒だな!」
そう言って私の手を取り駆け出したルフィを見て、ルフィの感情と、私の心にも湧いてきてしまった新しい感情にも、しばらくは気づかないでいようと思った。