わんぴーす

□怖いのはきっとふり
1ページ/1ページ





「あのさ……なんか最近怖いよ?」

「怖いって何が?」

「あなたが」


隣に座るルフィをじっと見つめる。
ルフィも私のことをじっと見つめる。

あ、笑った。



「ししし!」

「いやいや、なんだこれ!」



最近は気がつけば横にいるし、気がつけば触れていると気がついた。
なんだか最近のルフィは、ルフィなようでたまにルフィじゃない。けどルフィはルフィだし。
……いやルフィはルフィなんだけどさ。

私の自意識過剰かと思ったけど、勘が間違っていなければ、彼のスキンシップはまるでアレな感じがする。



「なにが怖いんだ?」

「うーん……。いや、自分で言うのもなんなんだよね」

「?」

「私はルフィのこと…好きだよ?」

「俺もだぞ!」

「……うーん、そうだよね。そりゃそうなんだけどさ、」

「?」



ルフィは、この船の船長であり仲間だ。
男とか女とか、そんなものじゃなくて、寧ろルフィを性別で表したら「男」というより「漢」だ。
ザ・少年漫画って奴だし、恋とか愛とか興味もなくて知りもしなさそうだし。



「ていうのはわかってんだけど…」



隣に座るルフィを見ると、私の手のひらを見ながらマッサージするように押して見たり、繋いでみたり、自分の手相と比べて見たりと楽しそう。
いや触りすぎだろ。距離感無視だな、心の。



「それ楽しい?」

「お前、手のシワうっすいなー!死ぬのか?」

「死なんわ!、ていうか触りすぎだしっ」



異性を感じてしまうルフィがちょっと怖いって感じてしまう。
そりゃ好きだけど、そういうのじゃないから、みたいな。

もういいでしょ、とルフィから手を離した。
この際だから開き直って言うわ。
この人、私のこと好きすぎる。



「※ ※ ※、昼寝しよう!」

「私部屋で本読んでくる。おやすみルフィ」

「じゃあ俺も本読む!」

「いや絶対ウソ!読むわけないじゃんルフィが!」

「お前失敬だなー、俺だって本くらい読む!」

「……別にいいんだよ?私に合わせなくて」



一緒に遊ぶのが当たり前だったけど、意識し始めてしまえばなんかやりずらくて、ちょっと距離を置こうとしてしまう。
じゃなきゃこいつ、トイレにまでついてくるし。



「お昼寝してていいし」

「俺がそうしてぇんだ!」

「…だって文字とか嫌いじゃん。なんでルフィはそんなに私の隣にいてくれるの?」

「んー……わっかんねぇけど、最近お前といるだけで、なんかすっげー嬉しいんだ!」

「……ズキュン」



にしし、なんて笑うから、一瞬かわいいなんて思ってしまった。
楽しいじゃなくて嬉しいっていうあたり、…なんか私も嬉しいじゃないか。



「仕方ないなー。…よし、お昼寝しよ」

「いいのか!?」

「うん。私もルフィといると嬉しい」

「一緒だな!」



そう言って私の手を取り駆け出したルフィを見て、ルフィの感情と、私の心にも湧いてきてしまった新しい感情にも、しばらくは気づかないでいようと思った。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ