ダイヤのA短編
□お誘い
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「デートしよ」
「は?」
「だから、デートしよ」
「いや普通にしねぇけど」
「はぁ?どうして御幸ってこうなんだろう」
「いやお前がどうしてこうなんだろう」
「なにをう!」
いいじゃーん、と言いながらグーで殴る動作をしてくる※※※。頬をグーでぐりぐりしてくるが、微塵も痛くないので無視で貫こうと思う。
「折角さ、誘ってやってんのにさ、」
「何だその上から目線は」
「御幸知ってる?今が何月か」
「…7月だろ?」
「31日」
「……何が言いてえの」
「…っだめだこりゃ。あんた幸せになれないよ」
「何でだよ、俺は幸せになるぞ誰よりも」
「願えば叶うなんて思わない方がいいよ」
「なんだよお前は。御託はいいから要件を言え」
「7月31日っていうもはや答えのようなヒント言ってるのに…」
「なに、なんかあんの」
「ほんっとにあんたって……この脳筋!」
「……」
一人で叫んで一人で教室から出て行った※※※の背中を追いかけることなく俺は見送った。
何が言いてえんだあのバカは。
「31日どうする?公園に5時でいい?」
「うん!すっごい楽しみ。浴衣着ていくよね?」
「当たり前!去年は行けなかったからな〜…お祭り」
……祭り?
たまたま聞こえてきた女子達の会話から、先ほどの※※※との会話でも出てきたワードが聞こえてきた。
「あーお腹すいた!チョコでも食べようかなこっちを向いて!」
いつの間にか戻ってきていた※※※が、大きな独り言を話しながら俺に背を向けて座っていた。
「***ちゃーん」
「……」
「31日の土曜日さ、俺部活昼までなんだよね」
「……だからなに」
「よかったら会わない?……浴衣とか着て」
無視されるかと思ったら案外反応があって良かった。いい誘い文句とか浮かばなかったけど、俺の言葉に振り返った奴は果てしなく嬉しそうな顔で、しょうがないなぁ、と言った。
本当にこいつは、素直っつーか、ばかっつーか。
「お前まじでかわいいな」
「……!」