ダイヤのA短編
□おばか
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「あ、やべ、オナラ出た」
「……知りたくなかった」
「大丈夫、俺の屁は臭いしねぇから」
「それどこ情報よ」
「俺!」
「死んで」
テスト週間であり部活動も全体が休みなので、私の家で御幸とお勉強中。
何せ私の頭が、まぁ、よく言って中の下だからだ。いや、下の上かな。ははは。
「どっちでもいいから早くこれ解けよ」
「解けたらとっくに解いてるよ」
「そっか、ごめんな」
「ううん、気にしないで」
御幸がすごくあわれみの目で見てくるから、なんだかこっちも少し悲しい気持ちになってきた。
はは、私ってそんなにだめなのかな。
「御幸、私大丈夫かな…」
「あぁ、大丈夫じゃないんじゃね」
「おい」
すごく大丈夫っぽい顔で言ってくるけど大丈夫じゃないんかい。
「御幸御幸、数学教えて」
「教えてってお前……まさか第1章から?」
「いいから、はやく、手取り足取り…」
「無理。最初は自分でやってみて、わかんなくなったら教えるわ」
なんだかそれっぽいことを言われてしまったので、口を閉ざすしかなくなってしまった。
そうは言われても、おバカによくある何が分からないのかが分からない状態なのだけれど…
「……男にはやらなきゃいけない時があるんじゃないんですか?」
「ある。だがそれは今じゃない確実に」
「そ、そっか」
なんだ、ボケてんのか?正気なのか?
突然真面目口調の御幸に、思わず黙り込んでしまう。目もガチ感漂う感じだけど、そういうボケなのか?それならそれでこっちもガチな感じのボケで対応した方がいいのだろうか。
そもそもそんなことを真剣に悩んでいる私って本当にどうしようもないんだろうな。
「そもそも一から教えてもらおうっていう考えが甘い」
「説教!?」
「そもそもここまで何の勉強もしてなかったのが悪い」
「ぐぬぬ……何も言えない」
「自分の出来なさを見誤ってたのが悪い」
お前は自分が思っているよりバカなのだから、とか段々悪口に近い暴言を並べてくる御幸に段々と苛立ちが湧いてきた。
なんなんだ!なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ!!しかも全部本当の事じゃないかむかつくなあ!!!
「御幸、私はお前を私に勉強を教えるためにここに呼んだのだ」
「はぁ」
「説教を受けるために呼んだんじゃあない!」
「何で芝居がかってんだよ」
左手を胸に添えて、右手を広げながら話すその姿はまるで演説者のようであろう。
分かるものには分からないものの気持ちはわかるまい!
「とりあえずやれって」
「はい…」
普段はヘラヘラしてる御幸に諭される私って一体。今まで逃げ続けてきたこの訳のわからない数式やグラフの書かれたクソ難しい教科書とちゃんと向き合わなければならない日が来たようだ。
「お前はやればできる子だろ?」
しかし優しくそう呟かれてしまえば、いとも簡単にやる気になってしまう私ってなんて単純なんだ。