ダイヤのA短編
□趣味
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「私、やっと見つけた!」
「何を?」
「ご趣味は、って聞かれた時の解答!」
「ご趣味は?」
「一人旅!」
「……おぉ、いいな」
「でしょでしょ!」
ありがちな質問だけど、部活にも入ってないし、ハマってるものもなくて、いつもここから話題を広げることが出来ずにいたのだ。
聞かれれば、買い物かな?なんて趣味とも言えない答えをしていたけれど、やっと見つけたのだ。
「いいよねいいよね」
「いいなー、旅かぁ」
「……え、あんたにもそんな趣を味わうような心があったの?」
「あるわ。ふざけんな」
泥臭くて汗臭くて暑苦しくて泥臭く…
そんな野球部のこの人に、ゆったりとした時間を味わう"旅"の良さを実感することができるなんて。むしろ"旅"という単語を知っていることさえ驚くところ。
「バカ野郎、そこは日本人として知ってるわ」
旅っていいよね、その土地の電車とか移動手段を使ってね、ふらっと寄った屋台の食べ物を食べたりして、お店の人とお話しなんかして、歩いて歩いて、歩き疲れたらまた休んで。
「じゃあ今度休みの日にでも行くか」
「え!!本当に!?」
「おう、楽しそうだし。」
「アリアリアリ!アリ寄りのアリ!」
いつも一人で行ってるからな、誰かと行くなんて想像もしていなかった。
彼氏なんてずーっといないからね。
いたことも、ないんだけどね!
「どこ行きたいの?」
「うーん、そうだなぁ。一人で行こうって考えてたのは、日本の最北端!」
「どこそれ」
「名前はわかんないけど、北海道の一番北!」
「なんだそれ、何かあんのそこ?」
「わかんないけどさ、行ってみたいじゃん!まだ見ぬ土地に」
「まぁ、わからなくもねぇな」
「広大な先の見えないくらい広い大地に立った時、自分が何を思うのか試してみたいんだよね」
「……お前ってがきんちょのくせに、なんかそういうところませてるよな」
「誰ががきんちょやねんおじさん!」
「タメだわ」
いつもするのは、行ったことない県内の駅で、素敵だなって感じる名前のところへ行くこと。
たまに何もない本当のど田舎に着いちゃうこともあるけど、なんか、なんか、
「御幸とならどこいっても楽しそう!」
「……ふはっ、お前素直だな」
楽しみだなぁ。楽しみだなぁ。楽しみだなぁ。
「楽しみだなぁ!」
「わかったっつーの」
嬉しそうな私を見て嬉しそうにしてる御幸を見て、ますます嬉しくなった。