*(新)ふしぎラビリンス*

□ふしぎラビリンス3〜力無きもの〜
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夜もだいぶ深まった頃、私はせっせと翌日の下ごしらえをしていた。
屋敷内の掃除をしていて、随分と時間を取られたからだ。


いつもなら、風呂に入っている頃だ。
でも、今日は風呂なし、と先に旺牙を言われてしまった。


聞けばどうやら私が入っている時は、彼が見張りについていたらしい。
旺牙は、“頭からの命令だから”と言っていた。
私は、知らないところで、守られていた。


この外見と、この性格。
私を女扱いするとは思ってなかった。


お礼を言いたい。
気にかけてくれてありがとう、と。
でも、彼はここの頭。
話すこと以前に、会うことも難しい。


それに今は……


“娼婦を……女を抱きに行ってる”


旺牙の
言葉が脳裏をよぎる。
翼宿も今、誰かの相手をしているのだろうか。


翼宿だけではなくて、攻児も。


「……………」


考えたらムカムカしてきた。
私の持つ翼宿のイメージが崩れてしまいそうだ。


「翼宿は、純情がいい、のに!」


ダンダンダン、と勢いよく大根を切った。
どうもここにいるとリアルだ。
知らなくてもいい私生活を見せられている気がする。


「いらないってえの。男の、事情なんてさ!」


最後にダン!と大根を切った。
……野菜は丁寧に扱いましょう。









下ごしらえが済む頃には、もう月の位置も随分と傾いていた。
これはもう、早く切り上げなくては。
明日の朝も早いのだから。


そう思った時だった。


明かりの乏しい、暗闇から……手が伸びてきた。


「っ……!?」


なに!?
と思った時には口を手で塞がれていた。
思いっきり鼻と口が塞がれていた息がしづらくなる。


「むうっ!!」


すぐに体が持ち上げられ、足を掴まれた。
バタバタと動かすと、すぐに腹にドンッと打ち込まれた。


殴られた……?


よく理解出来ずにいると、痛みが遅れてやってきた。
一体、何がどうなっているんだ。
私を後ろから羽交い締めにして口を塞ぐ者と、足を掴む者、2人いる。


「んんーーっ!!」
「ちっ……大人しゅうせえや」


耳元で聞こえた声に、聞き覚えがあった。
この人は……いつも喜んで……私の作ったご飯を食べてくれていた、人……。


「ええ子にしとき。頭らだけ色街に行ってもうて、ずるいやん」
「俺らも溜まっとんねん。日頃働いとる褒美くらいもらわなな」
「旺牙もおらんなんぞ、こんな日ぃは滅多にないで」


……な、なんて奴らだ……!


耳元で気持ちの悪い息遣いをしてくる。


「んっ!!うーーー!!」
「暴れんな!」
「酒蔵や!こいつ、下戸やで」
「!!」
「運ぶで!」


ま、まずい。
今まで絶対に入らないようにしていた場所へと連れていかれる。
私の足は地についておらず、暴れた拍子に、腰に下げていた短剣が、カシャンと落ちた。


目の端で取り残された短剣を追った。


ガチャリと開いたその部屋。
開いた瞬間に塞がれていた手が緩んだ。


「たすけ……っ!!」


大声を出そうとした瞬間に、鼻をつく酒の匂いに、ぐっと喉がなった。
もわっとした匂いが容赦なく鼻から体に入ってくる。


「っ………!」


声を出せない。
むしろ、息をしてはダメだ。


逃げたいのに、体は未だに羽交い締めにされて、更には服の上から体をまさぐられている。


「こいつ、息とめとるで」
「今だけや。苦しゅうなってどうせ口開ける」


こいつの言う通りだった。
ジタバタと抵抗すると、余計に息が苦しくなる。
吸いたくない。
でも、もう既に頭がクラクラする。


「っ……はあっ!」
「おっしゃ、吸ったで」
「おら、これでも飲んどけ」


そう言うと、酒瓶を私の口に押し込んだ。


「ぅぐっ……ごほっ!」


あ、熱い。
ものすごく喉が熱くて堪らない。


「……ごほっ……く、ぅ……」
「すぐに気持ちよくさせたるさかいな」
「……触るな!気色悪い!!」


頭が痛くなってきた。
服が剥ぎ取られ、なけなしの胸を掴みあげられた。
あまりにも乱暴で、痛くて、そして無性に思い出すのは……


“気をつけろ”


と言ってくれたあいつの言葉。
せっかく忠告してくれていたのに、このザマだ。
渾身の抵抗が何も意味をなさない。


このまま、ヤられてしまうのか。


酔いがもう回り始めたのか、私は抵抗すら、出来なくなった。


男共の腹立たしい荒い息が聞こえる。
何をそんなに興奮することがある?
日頃、男ばかりだからか?
だから……こんな私でもいい、のか。


「……たす、けて………」


あまり布でこしらえたお手製のショーツに手が伸びた時だった。


今まで閉じていた酒蔵の扉が………


開いた。




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