飽きない日々
□朝練
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気分で20分も早く自宅を出てしまった私。
通学先の大学への道のりにあるモックで時間を潰そうと足を進めていた。
途中の自動販売機で仕事用のお茶を買ったらもう一本ついてきてしまった。
…どうしよう。
まぁいっかと深く考えずに歩き出す。
すると、いつもの公園が見えてくる。
朝早いから誰もいないだろうと思った公園には、あの声が響いていた。
「…1521!…1522!…1523!」
「あれ……十四松君?」
覗くと、黄色いユニフォームに黄色いキャップのあの笑顔。
きっとあの青年は十四松君だろう。自信はあまりなかったがこちらが声をかけるとすぐに気づいて駆け寄ってきた。
「あ!名無しさんちゃんだ!そうだよ僕十四松!当ったり〜!」
「おぉ…そっか。一人で練習?」
朝からテンション高いな〜;;
少し気圧されながらも聞いてみた。
「うん!トド松や兄さん達はまだ寝てる。あ、でもそろそろ起きるかも」
「そっか〜。あ、そうだ。いいものあげる。」
「いいもの!?」
話の途中でさっき買ったお茶を思い出した。
カバンの中を探りペットボトルを取り出して十四松君に手渡す。
「はい、練習お疲れ。お茶でごめんね?」
「わーい!やった!ありが盗塁王!」
とても喜んでくれたようで、喉が乾いていたのかただ嬉しかったのかわからないけど、ふたを開けると一気に飲み干してしまった。
ちなみに500mlに少し増量された700ml。
感心しながら、ふと腕時計を見るとまだ10分ほど余裕があった。
「名無しさんちゃん、今日仕事?」
「うん、そうだよ。あ…よかったら十四松君の練習付き合おうか?」
「ほんと!?」
どうせ駅についても暇だし、と思って安易に頷いてしまった。
ちょっとまっててと言われて待つこと1、2分。
私は縄でバットに縛りつけられていた。
……!?
「え、ちょ、十四松君!?」
「いっくよお!」
「何してるのってキャアアアア!!」
ふわりと宙に浮いたと思ったら、よっこいせと私ごとバットをかまえた。
「わぁー、名無しさんちゃん一松兄さんよりも軽ーい」
「待って!嘘でしょ!?」
「ちゃんと足曲げててね!」
もう嫌な予感しかしない。
次の瞬間、私はバットと共に風を切ってスイングされた。
「…1!…2!…3!」
「いやああああ!」
聞こえないのか。この叫び声が。
練習に付き合うといったらキャッチボールじゃないのか?
私をなんだと思っているんだ…!
おえっ、酔ってきたのかだんだん気持ち悪くなってきてよろしくないものが込み上げてくる。
し、死ぬ……
「…97!…98!…99!…100!!まだ足りないけど終わり!」
振られ続けること多分5分。
やっと地獄から解放された私はその場に崩れた。
こいつ、まだやる気だったなんて…
結果、100回も振られたけどたまったもんじゃないね。
「はぁっ…はぁっ…し、死ぬ…」
「残りは一松兄さんの分ね!ありがとう!」
「……うん…」
色々と危なかったけど、これで運動不足解消にはなったかな…?
というか一松君は毎日やっているのか…
大変だろうな…
時計に視線を移すと、公園を出るまであと5分だった。
が、足がふらふらすると思うし少し早めに出た方がいいだろう。
地面に手をつきなんとか立ち上がる。
うわ、頭がくらくらする。
手を頭に当てると、体の重心が後ろへ傾いてしまった。
あ、倒れる…
「っと!ギリギリセーフ」
「カラ松兄さん!」
「え…?」