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□第一回拍手
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「♪ふっふふーふふーふ〜
ふっふふーふふーふ〜♪」

とある日のとある町外れのとあるビル···──の一室。
その日、ブラピオの副総長である慧は
いつにも増してご機嫌だった。
某定番バースデーソングを
鼻歌混じりに料理をしているのがその証拠。

そして料理もまた、いつも以上に気合が入っていた。
昨日から仕込み始め、今日は
3時間前から作り始めている。

「おはー!おっめっちゃ豪華じゃーん♪」
「お、大翔おはようさん。そこの唐揚げあっちのテーブルの海老フライの横に置いといてくれるか」
「あーい」

そこへ来たのは見た目の可愛さに
騙される人多数の実はやんちゃな切り込み隊長(と見せかけて以外とまとめ役←どっち)の大翔。
それを待ってましたとばかりに、来てそうそう早速扱き使う慧。
言われたとおり、大量の唐揚げが
綺麗に盛られた皿を軽々と持ち上げ、特別にビュッフェ形式に設置されたテーブルの上に置く。

「今回のメニュー半端ねぇな!めっちゃ美味そう♪」
「恒例のバースデー特別メニューだからな」

並んでいる料理は相も変わらず我等が総長である朔が好きな物ばかりだ。

「総長の喜ぶ顔が目に浮かぶな♪ほんっとによくやるよお前はっ!今日くらいゆっくりしとけばいいのに♪」
「いいんだよっ好きで作ってるんだし、何より俺の作った料理を美味しそうに食べてくれる総長を見るのが好きなんだ」
「ならいいんだけど♪」
「おう。···よし、じゃぁラストスパートに掛かるから、お前は取り皿とか箸並べてくれるか」
「うぃーっす」

他のメンバーが来る約束の30分前···
着々とバースデーパーティの準備は進められていき····

「おはようございます。」
「おっはよーっ律君登場〜」
「···おは··ござ···あれ、そうちょーは?」

いつもは一時間前に集合するメンバーもプレゼントを選んでいて遅くなったようで、パーティ開始の10分前にぞろぞろと登場。
他数十人いるメンバーも次々と現れていた。

「おそよぉ。もう準備できてるぞ♪」
「む、やまちゃん先輩そうちょーは?」
「律の総長がまだいない〜」
「こんな日(誕生日会)まで遅刻でしょうか」

来て直ぐに部屋の中をぐるりと見回し朔の存在を探す一年トリオだが、探し人は未だ姿を現していないようだ。

「慧、どーする。始めちゃう♪?」

チラッと壁に掛かってある時計を見て、料理中に汚れた服を脱ぎ、替えの服を着直している慧に大翔が尋ねると、眉間に少し皺を寄せながら何言ってるんだと制しの言葉が帰ってきた。

「俺らのメインが居なくてどーすんだよ」
「そりゃそうだけどさぁ、俺らあんまゆっくりできんし、それに今日の主役は···」

ギィッ

幹部二人が話し合いをし、結局どうするのかとそれぞれの席に座っている他のメンバー達が心配そうにそわそわしているところに扉を開ける音が─···。

「遅れてすまん」
「あ♪総ち···!?」

ッ!!!!?????
お待ちかね、皆大好き総長登場☆
なのだが、一瞬皆が皆言葉を失うことになった。
なぜか。

声がした入口を見ると、
長身のスタイルが良い身体に真っ白なシャツ、真っ白なベスト、真っ白なスーツを身にまとった総長···朔が立っていた。
そして何よりも目を惹くのが、ネクタイと胸ポケットに綺麗に折って挿しているハンカチの
綺麗なワインレッド·····ではなく右肩に乗せるように抱えている真赤な薔薇の束。

そう、皆その姿に見とれて声を出すタイミングを失ってしまったのだ─···。

「総長、それ格好良すぎっしょー···」

普段はいつも眠たそうな顔の
翡翠が珍しく目を見開きながらも惚けた顔を見せている。
朔は別に群を抜いてイケメン、とかではない(むしろちょっと目付きはキツめだし─···)のだが、周りを虜にするくらいの色気は持ち合わせているらしく、それと純白のスーツ、真赤な薔薇が相まって更に皆を虜にしていた。

「ん、ありがとな。ちょっと
気合い入れてみた。」

誕生日だからな、と一番最初に口を開いた翡翠にニヤリと笑いながら答える朔。
そのやりとりを見た慧がすかさず朔の側に寄り口を開いた。

「総長、やべーかっけーッス」
「惚れたか?」
「いや、惚れ"直した"ッス。」
「そうか。それは気合い入れて来た甲斐があったな。それじゃぁ·····」
「総長?」

もっと惚れ直させてやるよ、
そう言いながら真っ白のスーツパンツを履いている右足を膝まつき左足は立てる。
そして、その行動に戸惑いながらも目が離せないでいる慧の前に、持っていた花束を左手で抱えて出し、更に右手で慧の片手を取り軽く口付けをしながら言葉を連ねた。

「 My dear wife, Happy Birthday! thanks for bringing me to this world···」
「!····あ、 I what, it is at this very moment happiness me There are you ...だ、darling···」
「フフ、ありがとな。」

なぜ英語なのか。
そんなことどーでも良いと思えるくらいには、その光景は様にっていた。
自分に対してそんな行動を取った朔があまりにもカッコ良すぎてドキドキしすぎて身体がガッチガチになっているのは、恐らく目の前にいて未だに手を掴んでいる朔しか気付いていないだろう。

「残念だけどお似合いの夫婦だな·····」
「何言ってんの。絶対僕とそうちょーの方が夫婦として成り立つっしょ」
「慧が奥さんで総長が旦那なら、俺が旦那で総長を嫁に貰うしかない♪」
「その前に〜あの二人夫婦じゃないけどね〜どっちかってゆーと師弟関係···いや、飼い主とペット〜?」

一年生トリオ+切り込み隊長の大翔がコソコソ話していると、それが聞こえていたのか、
羨ましいだろう!!と言わんばかりに慧がニコニコ嬉しそうに笑いながら近付いて来た。

「ヤキモチ焼いてねーで、パーティ始めるぞー!」
「おー!美味そうだなっ食べよう食べよう!!···あ!慧今日はお前がこっちの席だぞ。」
「え、この席は総長の····」
「今日の主役ははお前なんだからメイン席に座るのはお前が妥当だろ?」

朔がそう言うと渋々と、でも
少し照れた様に一番上座の席に腰をおろした。

「よし。····じゃぁ、改めまして。慧、誕生日おめでとーっ!!」
「慧、おめでと♪」
「副長おめでとーございますっ!!」

朔の言葉に続き周りからも
沢山の祝福の声が響きわたる。

そう、お気付きかとは想うが、本日の主役···誕生日なのは慧なのだ。
昨日からせっせと作り続けてきた誕生日パーティ用の料理の数々は、総長である朔の誕生日でも、仲間の誰かの誕生日でもなく、”自分のパーティに集まってくれる仲間の為”に振る舞うためだったのだ。

ブラピオ副総長の慧とはそうゆう男である。

「あ、そうそう慧、プレゼントがあるんだ。ホラ。」

そう言って朔が渡したのは
綺麗にラッピングされている袋。

「え、まじっすか。さっきので死ぬほど嬉しかったのに。」

そう言いながらも何が出るかな♪何が出るかな♪っと歌いながらラッピングを解くと····

「エプロン···」

そう、プレゼントは慧の趣味で、もはやプロ級の腕を持つ
料理に欠かせないエプロンだった。
だが、そのデザインがまたなんとも····。
全体的には赤い生地で、お腹の辺りに赤と白のギンガムチェックポケットがあるのだが、そこからなんとも可愛らしいうさちゃんが顔を出しているではないか。

「似合うと思って。」
「一生大事にします···」

そう言いながら、厳ついとまでは言わないがある程度ガタイが良いワイルド系代表の高校生男子が、 保育士が進んで選びそうなそのデザインのエプロンをギュッと大事そうに胸に抱いた。
こんなにアンバランスな光景が他にあるだろうか。
そして、慧をどんな風に見たらそんなラブリーな柄のエプロンを贈りたくなるのか。
誰もがそう思ったが、ここは空気を読んで突っ込まないことにした。

「副長、私からもプレゼントがあるのですが···」
「あ、俺も♪」

優しい目で二人を見守っていたメンバーだったが、悠唯の言葉を皮切りに周りの仲間たちが次々と慧の前にプレゼントを置いていく。

「お前ら···ありがとな···」

ほぼ泣く寸前の顔でお礼を言いつつプレゼントを開けていく····と。

「エプロン、エプロン、エプロンエプロン···あ、またエプロン。」

なんとまあ、見事に殆んどのプレゼントがエプロン。
中にはエプロンではないのもあったが、それでも高級包丁だったり便利道具だったりと
やはりキッチングッズなのは
変わりなく──···。

「す、すいません副長。副長の事考えたら料理しか思い付かなくて、、、それに副長エプロンもってないみたいだったから···」
「他のアクセサリーとかは皆が用意するとおもって、俺もエプロン選んじゃって···すいません」
「俺もエプロン···。あ、でもちゃんと吸水性のある生地のやつ選んでっ」

プレゼントのあまりのかぶり様に周りが申し訳なく思ったのか
謝りだすと言う異様な空気に。
その空気を割るように入ってきた人物が。

「アハハハハッ!慧、お前
愛されてんなー!!良かったなぁ···家族が仲良しで父さんは嬉しいよっアハハッ」
「はいっ総長、俺ッ嬉しいッス!すいませんもう耐えられませんっ」

そう言いながら朔の時から我慢していた涙が慧の目から溢れるように出てきた。
みんなの気持ちとは裏腹に
かなり嬉しかった様だ。
何よりもみんなの気持が、だ。

「あ〜副長泣いてる〜」
「男泣きっしょ!」

一番側にいた律と翡翠が
からかう様に笑うのを見て、
ニヤリとした慧は、泣きながらがばっと2人をいっぺんに抱きしめた。

「わぁっプ、ちょ、止めてよ〜」
「うっせー黙れっ大人しく抱きしめさせろっクソガキどもめっありがとなっ!!」

それを見た朔はなんとも言えない愛しさが込上がってきて、さっきとは違う、でも心の底から幸せな笑い声が出た。

「ふふっ、こーんな可愛いワン子供がいっぱい居て本当に幸せだなぁ母さん」
「あぁ、幸せだなぁ父さんっふははっよし!この勢いで全員抱きしめ回るかっ」

その宣言にみんなからブーイングが起こりながらも、誰も逃げずに抱き締められて、そして
その後慧が作った料理を食べる·····そんな笑いの耐えないバースデーパーティは昼から始まって夜の7時くらいまで続いたのだった。




「──···ってゆうことがあった去年の誕プレなんだなこのエプロン。」
「へー·良い話ですね。···それにしても『お誕生おめでとう、産まれてきてくれてありがとう』だなんて腐タクじゃない時の朔哉って結構キザな奴?」
「清水、今じゃ考えられないだろうが去年まではそんなこと言ってもサマになる程には超かっけかったんだぞっ総長は。」
「朔哉の言葉に対して『 俺こそ、今この瞬間に貴方が居てくれて幸せです···』だ!?俺がその場にいたら寒過ぎて固まってましたね!!」
「馬っ鹿お前!清水っ馬鹿っ!!お前は総長の本当の姿を知らないから想像出来ないだけっ、、、あぁ可哀想なお馬鹿っ」
「馬鹿馬鹿言い過ぎです!·····それに全然可哀想じゃないですし?むしろ今のあなたの方が可哀想な気がしてなりませんけど。」
「·····言うなっ」

そんな慧の現在。
それはご飯を食べさせようと朔哉の部屋で料理を作ってる最中に急にリビングに呼ばれ遊びに来ていた光を、訳がわからないまま壁に追い詰め、所謂【壁どん】を強いられておよそ10分が経っていた。

「ハァハァ、いいみょ!”切羽詰まったワイルド系一匹狼が、平凡なあの子に自分の気持ちを打ち明けるシーン”!!!ハァハァ!みょーっ手がはかどるぅーっっ!滾るっ」

あの時と容姿、言動が大幅に変わった朔哉は今、そんな二人を雄叫びを上げながら高速スケッチ中。

訳も分からずこの格好をさせられ、朔哉の雄叫びを聞いてる途中で慧とのあまりにも近い距離で黙っている事に居た堪れなくなった光が何か話題を···と目に付いたのが、この外見に合わないギンガムチェックが可愛いうさちゃんエプロンだったのだ。
それで、それを咄嗟に指摘したら、あぁこれはなぁ!と嬉しそうににこやかに笑いながら話し出したのがさっきの話の始まり。

それからスケッチを終え、料理を食べたらあっさり慧を追い出す朔哉。

「総···清宮、俺ももうちょっと一緒に居たいっす···」
「駄目だみょ〜!統率委員長としての役目(療内見回り)を果たすお時間ですみょ!!」
「はいっす···涙」

さっさと行くみょっ!と朔哉に言われ泣く泣く部屋を出る慧。

「そ、総長?」

部屋を出ていくところを、何か思い出したかのように肩を捕まえる様にして行く手を阻み、自分の口を、立ち止まった慧の左耳に持っていって一言。

「そのエプロン、まだ持っててくれてありがとな。···やっぱり似合ってる」
「っ!」

言われたとたん、朔哉を振り返り真っ赤になった左耳を抑えながら何か言おうとして、結局何も言えず走る様に逃げていった。

「····お前、やっぱりキザだな」
「フフ、何がミョ?」



(ギャーッなにあれっ何今の!総長やっぱりかっけーーっすわぁ!!!)


口には出さなかったが心の中で大声で叫びまくる慧であった。




終われ。






 

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