社内恋愛

□高木と宏岡2
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「仲がいいんだなぁ」
「え?」

今日は宏岡さんと飲みに来ている。
宏岡さんと飲みに行くうちにお互いしっくり来て、何となく行きつけになっている飯と酒の種類も味も雰囲気もほどよくいい感じの小料理屋だ。
その名も『とりあえず』。

最初の一杯を早々と飲み干し一息ついたところで、唐突に宏岡さんが口を開いた。

「お前と進藤だよ」

デジャブ?
進藤にも似たような事聞かれたような···。

「あぁ、まぁ唯一の後輩ですしアイツあんな性格なんで弟みたいな感じですかね。」
「 ···なるほどな、弟か。」
「?」
「···じゃぁ、さしずめ俺はお前の兄貴って感じか?」
「は?いや、部長は····」

やばい、止まってしまった。
ここはそうですね、って
一言いえばいいだけなのに。
こんな返答に止まったら怪しまれてしまう。
とゆうかなんでこんな事聞くんだ?

「ん?」
「部長は部長とゆうか····」
「···お前さ、俺に対してと、進藤に対しての態度全然違くね?」
「え。いや、それは」

そりゃそうだろうよ!
気を抜いたらあんたの一挙一動に左右されている俺の気持ちがバレてしまうからな!
こっちはバレないようになるべく平然と対応しているのだ。
お酒だって飲み過ぎたら気ぃゆるゆるになっちゃうからこの人の前ではセーブしながら飲んでるし。

「それは、アイツが後輩で部長が上司だからではないですかね?」
「それ!その部長呼びもさ、昔は”宏岡さん”だったのに今は”部長”って言うし···」
「それは昔はもっと近い立場だったから···。流石に俺の立場で未だにそんな風に呼ぶには気が引けますし、それこそ進藤に示しが付かないですし。そこら辺はきっちりと···」

なんて言いながら罪悪感でいっぱいになる。
本当は毎日のように宏岡さん呼びしてるからなっはっはーっ!
夜限定でねーっ!!
そう。お察しの通り(?)夜ヌく時はいつもそうやって呼んでしまっていて···だから現実でも苗字で呼んだらなんか制御出来なさそうなんだよなぁ。
自分の自制心を保つためにも役職名の存在には感謝している。

····ってゆーか、なんで今日はこんな事聞くんだ?

「お前は真面目すぎなんだ!アイツより俺との方が付き合い長いっつーのにいつも余所余所しいとゆーか····」
「········」

この人は俺の気持ちもしらないでっっ

「部長酔ってます?」
「此処は飲みの席だろぉ?酔ってちゃいけねーのかよぉ?」
「いや、宏岡さん明日から出張じゃないんですか?」
「···それがどうしたよ」
「いや、もうちょっと大人としてですね」
「だーかーら!真面目かっ」
「真面目ではないですけど」
「酒の場では普段は言えないことを言ってもいいんだぞ!」
「なんですかそれ。」

話が噛み合ってない···。

それにしても、酒飲んで酔っ払ってる宏岡さん色気だだ漏れだから、危ないっ!
一生懸命保とうとしている俺の自制心よ堪えろっっ!!
宏岡さんにはもうちょっと自分の色気を自覚して頂きたいのだがっ!!
···これって俺が宏岡さんを好きだからこう見えるのだろうか?

「なぁ」
「なんですか?」
「 ···なんで俺とはもっと仲良くしてくれねーのぉ?」
「っ!」

か、かわえーっ!!!
酔ったこの人かわえーなぁもうチクショー!!
本当に35歳か?
とゆうかここ数年でこんな酔い方初めてみたぞ。
いや、酔ってる姿は見た事あるが、こんなふうに色々言うのは今までなかったはずだ。

「···部長は、俺と仲良くしたいんですか?」
「お前は違うのか···?」

だ、からっ!
その顔で、その色気で、そんな事言うなよ〜〜···
今が想いを留めておくギリギリのラインなんだ。
これ以上距離を詰めたら····
気持ちをセーブできなくなってしまう。
でも

「·····いえ」

飲みの場では普段は言えないことを言ってもいい···んだよな。

宏岡さん·····俺、貴方が好きなんですよ?
···流石にそれは言えないけど。

「もっと仲良くなりたいです。」

これくらいは言ってもいいよな?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


宏岡さんと飲みに行ってから3日─···
次の日から宏岡さんは二泊三日の出張だったのでその期間はもちろん会えていないことになる。
今日帰って来る筈なのだが、定時になっても会社に来なかった事から直帰するのだろう。
明日から週末だから···
ああ、5日も会えない事になる。
今日は寂しさ紛らわす為にDVDでも借りて帰ろうかな。

ぐぅぅ〜····

「と、その前に腹ごしらえが先か。」

1人寂しく『とりあえず』にでも行くとしよう。


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