社内恋愛

□宏岡と進藤
1ページ/2ページ


「高木先輩!飲んでますか!?」

そう言いながら進藤が後ろから突然のし掛かってきた。

・・・重いんだけど。

「俺、先輩との飲み会楽しみにしてたんですよぉ!」
「いや、俺とだけじゃないから。」
「細かいとこはいいじゃないですかぁ」

相変わらずのヘラヘラした顔で近付いてきた進藤はお酒の効果もあってかいつにも増してチャラい。
息抜きも大事だがそれは時と場合による、とゆうことを教えてあげなければならない。
何てったって俺は進藤の直属の先輩だからだ。(どやっ)

「進藤、お前新人なんだから先輩の酒ついでまわっとけよ」
「えー高木先輩になら幾らでもつぎますけど!」
「馬鹿か俺を接待してどーすんだよ!百歩譲って上司全員じゃなくても、今日の主役である宏岡部長のとこは行っておけ」

そう。
今日はプライベートで飲みに来てるわけではなく、完全なる会社の飲み会だ。
さっきも言ったが宏岡さんが主役で、だ。
この前行った出張での営業の頑張りが効いたのか、はたまた元々の実力なのか・・・社運を賭けた一大プロジェクトの契約が決まり、会社に大きく貢献したとゆうことで今日はそのお祝いなのだ。
俺も、自分の事以上に嬉しくて個人的にお祝いしたいくらいなんだけど、これからそのプロジェクトに関わってくる取引先との接待やさっそく動かなくてはいけない状態が出張後直ぐ続いていて、なかなかそうはいかない。
とゆうか、あれから……宏岡さんの家に行ったあの日からほぼ会話すら出来ていないのが現状だ。

「俺はさっき行ってきたぞ!賛辞の言葉くらいパッと言えるようにならないとな」
「・・・言いたくねー……(ボソッ)」
「何か言った?」
「なーんもないですよ先輩♪じゃぁ宣戦布告でもしてきますかね♪」

一瞬暗い顔をしたかと思えば、すぐにいつもの調子に戻り、大層なことを言い出した。

「宣戦・・・ってなんの?」
「そりゃ、」
「?」
「・・・仕事に対してに決まってるでしょう!!」
「は、お前が部長超えるつもり!?」
「(無理、とか言われるかな・・・)は、はい。」
「そうか!」

こいつはチャライが要領もよくて仕事覚えも早いしで何気に上の人達から期待されてたりするのだ。
調子に乗るから本人には言わないが・・・。
ただ最近の子とひとくくりにするとあれだが、こいつの場合は元々の性格からくるものなのか、欲がないのだ。
与えられた範囲の仕事を淡々とこなしていくだけ─・・・。それが悪いとは言わないし間違えでもないのだが。
でもやはりせっかく一緒に仕事するのであればやりがいとゆうものを感じてほしと思っていたのだ。
それが進藤からはあまり感じられなかったから、先輩としてどうしたものかと悩んでいた。
なのにまさか!進藤が、俺の先輩で会社のエースである宏岡さんを目標にしていたなんて!!ちゃんと欲があっただなんて!!!

「うん!いいぞっ!!お前ならいけそうだな!!頑張れよ!って、それだと俺も追い抜かされちまうなぁ。応援はするけど手加減はしないからなぁ!!ま、お互いに頑張ろうぜ!!」
「・・・っ!!はい!!!(好きだっ!!!!!)」
    
会社へのではなく自分にたいしての欲を更に高めてしまったことにきずかないまま、俺もやってやるぜ!と意気込みつつ上司の方へと千鳥足でこの場を去った高木を見届けると、自分も立ち上がり不本意だが宏岡の元へと足を向けるのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「失礼します」
「あぁ、進藤。来てくれてたのか」

へっ!あんたの為に来たわけではないですけどねーだ!!
付き合いで忙しい部長の少しの暇を狙って急遽開かれた飲み会故、全員参加は義務付けられていなかったのだが・・・。
少しでも多い時間を先輩と過ごしたくて今日は参加したんだ。
何が悲しくて上司とは言えライバルかもしれない男の光跡を讃えなければならないのか。
(悔しいから、宏岡がメインの飲み会だとは思いたくない余裕のない男、進藤。)

「 ありがとうな」
「いえ、、、おめでとうございます。すみません挨拶遅れて」
「いや、気にする「高木先輩と」
「え、」

あ、ほら。
やっぱり高木先輩の名前を出すと少し動揺するのが分かる。
確信はない。
ただ、人を好きになった時点でその人の周りのことも自然と見てしまってるから、その人に対する視線とかにこっちまで敏感になってしまうのだ。下手したら見られてる本人よりも・・・。
だからそう感じたしきずいてしまったのだ。
部長も、俺と同じ感情を高木先輩に向けている、と──・・・。

「・・・高木と?」
「えぇ。高木先輩と話が盛り上がってしまって」
「そ、そうか。仲、いいもんな、お前ら。」
「はいそれはもう!!歳も近いですしね、超仲いいですよ!!」

あぁ、でも・・・くそ。
俺もだせぇな、こんな分かりやすい挑発じみた事を言うなんて。
余裕のない証拠じゃないか。

「まぁ、俺も結構付き合い長いからそれなりの付き合いだけどな」

・・・お?
意外にも乗ってきた?

「でも、ほら。やっぱりいち社員と部長様とじゃ気つかったりして、なかなか・・・ねぇ?」
「そ、そんなことないぞ?付き合い長い上司と部下だからこそ込み入った話とか出来たりするってもんだぞ」

ちょっと嫌味過ぎたかな……。
でも、仕事上の部長しか知らないが、何時もはどんなことにもどしっと構えていて頼り甲斐のある人だ。こんなに動揺した感じ、短い期間ではあるがあまり見たこたがない。

「・・・そんなもんですかねぇ」
「そんなもんだ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

うむ。この雰囲気は・・・
ここは一つ、マジで宣戦布告でもしてみるか?

「ん、高木飲ませ過ぎたかな〜」

と、ここで不穏な雰囲気の中、第三者の声が二人を我に帰らせた。
50前のシブイイケメンおじさん。
ちょい悪どころか場所によっては本物に見えるそんな雰囲気と出で立ちをしている、榎原(ヨワラ)専務だ。

「榎原専務、高木がどうしました?」
「あぁ、宏岡と進藤か。いや、俺んとこに挨拶に来てくれたから一緒に飲んでたんだけどよ。あの歳だから女の一人や二人居るかと思ってからかってやろおとしたらなんか急にグイグイ飲みだしちまってよ〜。ありゃ潰れるのも時間の問題だな」

その話を聞いていると自然とさっきまで高木先輩がいた方を見てしまう。
こ、これは・・・チャンスではないか!?
酒の力を借りて一気に距離を縮めるには絶好の機会!!!
ズルイとか言わせねーよ?なんの行動も起こさないよりは良いと思うから。
と、ゆうか高木先輩、榎原専務の言葉に明らかに動揺しているようだ。何か思う節があるのだろうか。気になるな……
と、色々な考えを頭で回していると、さっそくとばかりに高木が席を立ちトイレに向かうのが見えた。
と、ほぼ同じタイミングで宏岡部長も立ち上がったではないか。
もしかして、もしかしなくても……

「部長、何処に行かれるんですか?」
「いや、別に・・・喫煙所だ」
「このタイミングで?嘘でしょそれ、絶対先輩のとこ行くきでしたよね」
「たまたまあいつがトイレに行くタイミングと重なっただけだ。」
「あ、ほら!やっぱり先輩がトイレ行ったの見てたんですね!?」
「だからたまたまだって言っているだろ。…そのついでに高木を見てくるだけだ」
「高木先輩の介護なら俺がしますので」
「いや、俺の為に来てくれた会で潰れたなら俺が責任を取るよ」
「・・・・・」
「・・・・・」

元から良い雰囲気だった訳では無いが、更に空気が悪くなるのが手に取るように分かる。

「なんだぁ?なんでそそんな高木の介護の取り合いしてんだよ?こうしてる間にも高木苦しがってるぜ?行くなら早く行ってやらないと・・・」
「あ、はいスミマセン。行ってきます」
「いえいえ部長の、しかも本日の主役様にそんな手を煩わせるようなことさせられませんよ」
「部下の失態は俺の責任だ。更にその下であるお前が出てくるところではない」
 「なんなんだ、おめぇら面倒癖ぇな〜。もういい飲ませ過ぎた俺の責任でもあるし俺が行く。」


シーン・・・

確かにそれが1番納得がいく方法かもしれない。
そう思い、この場を去る専務に、お願いしますとだけ伝えると、また先程のピリピリした空気に一瞬で元通り。
はぁ、面倒癖ぇ、か。

「・・・・ぶっちゃけ聞きますけどいいですか部長」
「なんだ?」
「貴方、高木先輩のこと好きですよね?」
「・・・」
「認めないんですか?俺は好きですけど。その程度の気持ちなら・・・」
「その程度の気持ちではないから、だ。あいつにもまだ伝えてないのに、意思確認だとしても先にお前にその言葉を言うもりはない」
「!」

それじゃぁ俺が本気じゃないみたいな言い方じゃん。

「お前は、もうあいつに云ったのか?」
「・・・いえ」
「それなら尚更だな。俺に言ってどうするんだ?それを言われたからって、それを知ったからって気持ちが変わるもんでもないだろうに」
「・・・・・」

ごもっともだ。
宣戦布告とかしてなんになる。
”想い人が同じ”のライバル関係に当たる人にではなく、”想いを寄せてる相手”に伝えなくてはなにも行動をしたことにはならない。
何も前に進めない……。
「俺は好きですけど」なんて部長に言ったけど・・・・あれって自分自身に言い聞かせてたのかも・・・ってあれ?
一番面倒臭いのは、ガキなのは……ああ、俺自身だ。

本当に余裕が無い。

「ほら高木、水飲めよ」

思考を巡らせていると榎原専務の声が聞こえて来たのでそちらの方を見てみると、高木先輩が壁際に少しぐったりしながら寄り掛かっていた。

なんか、

「・・・色っぽい」
「え?」
「あ、いや、なんでもない、です。」

やばい、頭ん中で言ったと思ってたのに口に出てた!?
でもさでもさ!
少し汗ばんでいて、少しでも楽になるようにYシャツも第三ボタンまで開けていて、無防備で・・・火照って体が熱いのか赤くなってて、なんか、こう、エロいとか・・・。
先輩が苦しんでいるとゆうのに不謹慎にもそう思ってしまったりした。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ