◆文

□雷
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ザァァァア…
黒雲立ち込める空。降りしきる雨の音が窓越しに聞こえる。
まさに豪雨と呼べるそれは、なんでも今年一番の雨量が予想されているらしい。

「おーおーおー、すげぇ雨だなァ……」
「もうこれ台風レベルだよね。」

今日は買物に行く予定であったが、こんな雨の日に外出なんてさすがにできないと諦めて中也とゆあは大人しく部屋の中でのんびりしていた。

ピカッゴロゴロ……

「雷まで鳴ってきやがっ……」
「……」
「……なにしてんだゆあ……」

中也が外からゆあに視線を戻すと、ゆあはゴ●ゴ13のような顔で腹部を抑えていた。腹部…というか、もっとピンポイントで言うと臍を抑えていた。

「臍抑えてる。」
「……ゆあさん年はおいくつかしら?(裏声)」
「あら、中也さんお忘れになって?今年で齢14になりますわ。(裏声)」

莫迦か、莫迦なのかこいつは……
呆れ果てて思わずお嬢様口調になったわ莫迦
まさかとは思ったが一応確認をとってみた

「なんで臍なんか抑えてんだよ。」
「え、だって雷鳴ったら臍抑えないと雷様に取られちゃうって小さい時お母さんが……」
「」

だめだこいつ…世間知らずにも程がある。つか途中で母親も教えてやれよ。絶対面白がってんだろ。

「早く中也も抑えないと取られちゃうよ?」
「阿呆か、そんないるかもわかんねー奴が臍なんか取りに来るわけねーだろ」
「う、わかんないじゃん!いるかもしれないじゃん!それかほら、比喩表現で出べそになる呪いとか!!」
「出べそになる呪いってなんだよ!」
「日に日に臍が出てきて最後にはポロッと……」
「やめろよ普通にこえーわ!!」

比喩表現って言葉は知ってんのになんでこんな迷信信じてんだよ。

「あのなァ。臍取られるってのは小さい子に教える迷信だから、んなもん信じなくていいんだよ。」
「え?そうなの?私今までめっちゃ臍抑えてたのに」
「可哀想になァ…今まで誰も教えてくれなかったんだな……くくっ」
「わ、笑わないでよ!友達少ないんだもん!仕方ないじゃん!!」

けらけら笑ってやるとキッと睨みつけてきたが全然恐くない。

「中也だって友達いないくせに!!」
「なっ!煩ぇな!友達くらい……いるからな!ちゃんと!!」
「間があった!!今間があった!!!ちなみに部下は友達に含まれないからね!!」
「あ、当たり前だ!!」



……あ、またやってる。
自室まで聞こえる二人の声に太宰は苦笑いを浮かべる。
外はこんなに荒れているのにほんと、お熱いことで。

「煩くて眠れないのだけれど……」

森さんに頼んで部屋変えてもらおうかな、という独り言は溜息とともに静かに部屋に吸い込まれていった。

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