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□宵酔い
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深夜。外の静まり返った空気とは対照的に、マフィアの拠点にあるバーはとても賑わっていた。
「んでよぉ、首領が・・・」
「あーはいはい、中原さん酔いすぎです」
頬を上気させ、潤んだ目で愚痴を零す中也に梶井は辟易しつつ適当にあしらう。
「ばぁか、よってるっていうほーがよってるんらよぉ」
「いった!ちょっと、やめてくださいよ!!」
呂律も怪しくなってきた中也に足をげしげし蹴られ涙目になりつつ救世主を待つ。
(もうそろそろ来る頃かな・・・)
梶井が扉の方に視線を向けると、丁度ゆあが入ってきた。
酒癖がもともと悪い中也だったが、太宰がマフィアを抜けてから明らかに拍車がかっていた。もちろん、誰も指摘する者はいないがみんなそれとなく察していた。
その為ゆあも飲酒についてはなにも言及せず、梶井に呼び出されては酔い潰れた中也を迎えに行くのを繰り返していた。
ゆあは梶井と中也に気づくとたたたっと小走りで駆け寄る。
「梶井さんすみません・・・! 」
「やっときた。ほら、中原さん、ゆあちゃん来ましたよ」
「んんんー?」
既に酔いが回っており出来上がった中也がとろんとした目で顔を上げる。
「中也そろそろ帰ろ?だいぶ酔ってるみたいだし」
ほれ、と手を差し伸べると急にぐいっと引っ張られ膝の上に座らされた。
「!?ちょっと、中也!?」
「だぁれがよってるって?おれぁぜんぜんよっぱらってなんてねー」
なにが可笑しいのかぶはははははははと爆笑する中也からなんとか逃れようと暴れるが、腕で腹部をがっちり抑えられている為抜け出せない。
梶井に視線で助けを求めようとするが、役目は済んだとばかりに梶井は既に別の席で広津等と飲んでいた。
「はーなーしーてー!!帰ろう中也!!ハウス!!中也ハウス!!!」
「うるせぇおれはいぬじゃねぇ!おれのさけがのめねぇってのかぁ!!」
「飲めるわけあるかい!!私未成年!!わかる!?アンダスタンッ!?」
てゆか中也も未成年だよね・・・と思ったがそこはもう今更なので触れないでおく。
「ごちゃごちゃうるせー」
「んぐ!?」
ついに業を煮やした中也が目の前にあったグラスを掴み無理矢理ゆあの口に流し込む。
苦しくてもがいたがグラスが空になるまで離してもらえず、結局残り全部飲み干してしまった。