◆文
□穏やかに眠る
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窓の外から小鳥の囀りが聞こえる。
ぼんやり浮上した意識の中で今何時だろ…?とゆあはそっと目を開いた。
「…!?」
眼前に中也の顔があり思わず硬直する。
…え?なんで中也が…てゆか私中也に抱きしめられて…!?
自分が中也の腕の中にいると気づき顔が一気に熱くなる。
なんでなんでなんで!?なにがどうなってこうなったの!?なんか頭もズキズキするよ…!?
混乱で頭が沸騰しそうになっていると気配に気づいたのか中也が目を覚ました。
「ん…ゆあ?」
「オ、オハヨウゴザイマス」
「はよ。」
のんきに欠伸をして伸びをする中也にゆあは恐る恐る尋ねる。
「あの、中也さん、なにがどうなってこうなったんでしょうか?」
「あ?お前なんも覚えてねーのか?」
「なんにも。中也を迎えにいったとこまでは覚えてるんだけどそこからの記憶が曖昧で…」
「ふーん」
にやりと口角を上げて中也が再び腕を回し、顔を覗き込んでくる。
「な、なんすか」
「お前昨日俺に接吻してきたんだぜ?」
「…はい?」
絶対嘘だ。今こうしてるだけでも恥ずかしいのに、キスなんて…それも自分からとかありえない。
「嘘じゃねーぞ。しかも舌は入れてくるわ人の耳は齧ったり息吹きかけたりしてくるわで大変だったんだからな?」
ほら、と中也が耳を見せてくると確かにそこには歯形がほんのりついていた。
…これを私が?
とても信じがたくはあるが証拠を突き付けられると否定もできない。仮に自分じゃないとしても、それはそれで別の女性からつけられたということになるのでいい気はしない。…というかめちゃくちゃ嫌だ。
「まさかゆあが酔うとあんなに大胆になるなんてなぁ」
「…ご、ごめんなさい」
自分がそんなことをしただなんて、想像するだけで恥ずかしすぎて死んでしまいそうだ。穴があったら今すぐ入りたい。
「ん。まぁ、酒飲ませたのは俺だしな。ずいぶん酔ってたが具合とか悪くねぇか?」
「…ちょっと頭がズキズキする」
熱くなった顔を隠すように俯いて答えると、中也の暖かい手がそっと頭に触れる。
「じゃあ今日は1日休んでろ。あとで飯作ってやる」
「ありがとう」
中也の優しさに頬が緩みぎゅっと服を握る。
すると唐突に部屋の扉が開いた。