【イケメン戦国】時をかける恋
□【猿飛佐助】きみにごほうびを
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私は、望まずも彼と別れ、現代へとまたタイムスリップしてきてしまっていた。
佐助くんの計算では、またワームホールが現れるとのことだが、それはまだ先だ。
ふいに私の携帯電話が着信を告げる。
ディスプレイを見ると、忙しくワームホールの研究を続けている佐助くんからだ。
「何かあったのかな?」
不安と緊張に包まれながら、携帯電話を手に取る。
「もしもし?佐助くん?」
『 涼莉 さん。明日って時間あるかな?』
「う、うん。何かあったの?」
『ちょっと君に用事があって。』
家に迎えにくるという佐助くんに、家の場所を伝え、落ち着かない気持ちで電話を切る。
もしも、二度とワームホールが現れなかったら…。
私は二度と、彼には会えないーーー。
そんな不安が込み上げるけれど。
「いけない、いけない!しっかりしなきゃ!」
必ずまた彼に会えるーーーっ!
そう自分に言い聞かせ、私は布団へと潜り込んだ。
▶▶▶
翌朝、お化粧をすませ、ワンピースに身を包むと、玄関のチャイムが鳴る。
佐助くんだ。
既に見慣れた忍者姿ではなく、現代の服に身を包んだ佐助くんが、顔をのぞかせた。
「佐助くんが天井からじゃなくて、玄関から登場なんて珍しいね。」
「天井からも入れるけど、ここは現代だから。」
真顔で言う佐助くんがおかしくて、思わず噴き出す。
「良かった、君が元気そうで。」
「うん、何とか…。」
「次にワームホールが出現し、タイムスリップしたら、俺たちは二度と現代には戻れない…。君は本当に後悔しない?」
「うん……私は、彼と生きたい。だから後悔なんてしない。」
家族にも、友人にも、全てにさよならした。
彼と生きるためにーーー。
その強い意思を表した瞳で、佐助くんを見つめる。
しばらくの間、黙って私を見ていた佐助くんが、ふいに口火を切る。
「気持ちは変わらないみたいだね…それならば、今のこの時代『現代ライフ』を今日は思いきり楽しもう。」
こうして私と佐助くんは、現代ライフを楽しむため、いわゆる『現代デート』をすることになった。
▶▶▶
佐助くんが借りてきた車で、遊園地や繁華街でのショッピングを楽しみ、陽も沈みかけた頃、夜景の見えるレストランへと足を向けた。
「佐助くんって……」
「何?」
「研究室にこもってばかりなんだと思ってたけど、お洒落なお店も知ってるんだね?」
「俺だって、戦国時代へタイムスリップする前は、忍者でもなかったし、普通の現代人だったよ。」
苦笑しながら、佐助くんが答える。
「あ、佐助くんはワインとシャンパンどっちがいい?戦国時代じゃ飲めないから。」
「俺は運転手だからウーロン茶で。 涼莉 さんは好きなものを飲んで。」
「じゃあ、このシャンパン飲んでいいかな?」
2人でメニューを見ながら、あれこれと食べ物を選ぶと、佐助くんがそれをスマートに注文する。
「何か以外!」
「忍者は常に冷静さが大切なんだ。」
場所と発言が、あまりにも似つかわしくなくて、思わず笑いが漏れる。
「さあ、乾杯しよう。『現代ライフに乾杯!』」
私は、笑いながらグラスを傾け、佐助くんと乾杯する。
「今日は君がたくさん笑ってくれて良かった。」
「え?」
「彼と離れ離れになって、毎日つらい想いをしてると思ったから。」
「だから誘ってくれたの?」
レストランの窓から見える景色は、戦も何もない、ただ平和な現代の光だけを放っている。
その光を受けながら、佐助くんが言ったーーー。
「強く素敵な君へ、俺からのプレゼント。」
照れたようにそう言う佐助くんの横顔は、ライトアップされた夜景のように、少し赤くなっているように見えた。
▶ 完 ◀