【イケメン戦国】時をかける恋
□【織田信長】KISS〜手料理はヒミツの味〜
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私は信長様に呼び出され、天主へと来ていた。
小難しい顔をして待っていた信長様に見せられたもの。
それは『パン』だった……。
「先日訪れた南蛮の使者が持ってきたものだ。食べてはみたものの味がない。 涼莉 の元の世では、このような食べ物はあったか?」
「これは私のいた世では『パン』と呼ばれていた一般的な食べ物です。確かにこれだけでは味が薄いかもしれませんね。」
「貴様のいた世では親しまれていた物なのか。では、この『ぱん』はどうやって食べれば良い?」
「焼いたものにバターをつけて、朝餉にするのが一般的な食べ方ですが…この世にはまだバターがありませんね……」
「『ばたー』とは何だ? 涼莉 。どうやって作る?」
「ええっと、お店で買っていたので作り方は知りませんが………あっ!」
バターは作れないけど、パンを使って作れる料理もあるっ!
「このパンを使って、信長様に私が料理を作ってもいいですか?」
こうして私は、信長様に手料理を作ることになった。
▶▶▶
台所に立つ私の隣に、信長様がワクワクした顔で立つ。
「この玉葱を細かく切れば良いのだな?」
玉葱を片手に、無邪気な笑顔で包丁を手に取る信長様が可愛くて、笑みが漏れる。
「これから作る料理は何という名だ?」
鼻歌を歌いながら、器用に玉葱を切る信長様を微笑ましく思いながら私は答える。
「『ハンバーグ』という料理です。本当は乾燥させたパンを細かくしたものを使うんですけど………」
信長様は手を動かしながらも、私の説明に熱心に聞き入ってくれる。
「つまりは、ないものは他のもので代用するということだな。元の世では代用が一般的なのか?」
「一般的でもないんですけど……あ、次はこれに卵を入れてですね……」
「これでいいのか?」
そんな会話をしながら、2人でハンバーグをこねて丸めていく。
(こういうのって新婚の夫婦みたい…///)
「何を赤くなっている?」
「い、いえ。別に……。」
「言わないのなら、こうするまでだ。」
信長様の手が私の顎を引き寄せーーー。
私の唇にキスを落とす。
「も、もうっ!こねたハンバーグが…顔についちゃったじゃないですかっっっ!」
「正直に言わない仕置きだ。言わないのなら次は………」
信長様はいたずらっ子のような瞳で、私の頬に触れようとする。
「わ、分かりました!分かりましたっ!白状しますっっっ!」
「何だ?」
「あの…こうやって一緒に料理するのって結婚したばかりの夫婦みたいだなって……///」
「何を呆けたことを言っている。結婚したばかりだけではない。生涯ずっと、だ。」
プロポーズのような言葉に、私は更に真っ赤になるけれど、信長様は照れる様子もなく、濡れた手ぬぐいで、汚れた私の顎を丁寧に拭いてくれる。
「よし!」
そう言った信長様から二度目のキスが落ちた頃、脇ではハンバーグが焼ける音が響いていた。
▶▶▶
「それにしても…たくさん作りすぎちゃいましたね……」
信長様と2人台所で、お皿に山盛りのハンバーグを見つめる。
「私、他の皆さんにも配ってきます!」
「それはならん!」
「え?」
「 涼莉 と共に作った『はんばーぐ』だ。誰にもやらん。」
信長様はニヤリと笑うと、台所の脇に置いてあった椅子を持ってくるや否や、ハンバーグを食べ始めた。
「あの、お部屋で………」
「秘密裏に食べるのも料理のうちだ。」
愉しげに、信長様は次々とハンバーグの山を崩していく。
「『はんばーぐ』とやらはなかなか旨いな。安土の料理人といえども、この真似はできまい。貴様も早く食べろ。秘密の料理が見つかるではないか。」
どこか自慢気な表情の信長様に抱き寄せられ、膝へ乗せられる。
「いただきます。」
「俺と共に作った『はんばーぐ』はどうだ?旨いか?」
「ほどよい塩加減で美味しいです!」
信長様の膝の上にいるのも忘れて、味付けも代用な、初めて食べるハンバーグの味に微笑む。
信長様も、私を抱えながら、満足そうにハンバーグを口に運びながら言う。
「俺が初めて 涼莉 と作った料理だからな。旨くて当然だ。」
そう言う信長様の無邪気な笑顔が、可愛くて、愛しくて。
自信に満ちた、でも温かい眼差しーーー。
嬉しくて、ハンバーグを食べる信長様を見つめていたら。
「どうした?口づけでも欲しくなったか?」
からかい混じりの信長様の声がしたと思ったら、信長様は声をひそめて耳元で囁いた。
「焦らずとも、部屋でじっくり悦ばせてやる。」
「っ!///」
台所で三度目のキスが降った夜、部屋に戻った私に信長様との長い長い夜が待ち構えていたーーー。
▶ 完 ◀