行方不明の姫

□地獄へようこそ
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「デスよね〜! あのお店は僕のお気に入りなんデスよ!」
「私はまだこの辺りをあまり知らないからな……ぜひ今度連れてってくれ」
「お餅もち餅もちろんデス!」

 俺は昨日海斗にある指示を出した。
 それは例の転校生との接触。
 昨日の一件を見て明らかにおかしいと思った俺は、ターゲットと同学年である海斗に任せた。
 そして今この通り一年のクラス前の廊下で二人はたわいない話に花を咲かせている。

「海斗の野郎、目的を忘れてんじゃねぇだろうな」
「大丈夫ですよ怜旺さん。もし忘れてても僕がいますから……」
 二人の様子を、影から見守る俺と優=iまさる)。
 優も鳳凰の一員で、海斗と同学年だ。
 因みに俺と海斗と優は中学で出会い、鳳凰結成時もこの三人が最初である。
 そして優は鳳凰の中で最も影が薄い。
 俺達同様昨日の一件を一部始終見ていた優だが、一言も喋っていないので俺はてっきりいないものかと。

「怜旺さん……今失礼なことを考えました……?」
 優が笑いながら黒いオーラを身に纏わせた。
 こういうところは海斗によく似てる。
「なんでもねぇよ」
「そうですか。あ、そろそろホームルーム始まるから僕は行くね!」
 ニッコリと微笑み去って行った優。
 海斗と転校生も別れ各クラスに戻って行く。
 次々に教室に入る真面目な一年生を見て、俺も空き教室へ戻ることにした。
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