行方不明の姫
□地獄へようこそ
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時は過ぎ放課後。
いつものように寝て過ごした。
そのとき激しく音をたてて開かれた扉に嫌気がさす。
「怜ッ旺サ〜ン! おはようございマ〜ス!」
気持ち悪いほど機嫌が良い海斗に、俺は冷めた目で視線を扉に移した。
「報告デ〜ス報告〜!」
「よう海斗…….随分と上機嫌じゃねぇか」
「いや〜久々に楽しい学校生活を送りまシタ」
海斗はニコニコと笑いながら俺の定位置の隣に座った。
なんだか気味が悪いので俺は少し海斗から離れて座り直す。
「四限目は天香サンと一緒にサボったんデスよ〜。そしたら昼休みにおっかない教頭が追いかけてきてデスね〜」
「えェ? 天香って誰?」
「天香サンたらスゴイんデスよ? 最終手段は窓から飛び降りる、デスもん」
二階からデシタけど無事に着地しまシタ、と夢中になって語る海斗。
「オレは無視かよォ!」
青翔がシュンと項垂れた。
あまり相手にされないところを最近見かける気がする。
「海斗……青翔の話を聞いてあげて〜」
すかさず優がフォローした。
あれ、優、いたのか。
「え? あぁ天香サンのことデスか? 今日名前教えてもらいマシタよ。水瀬天香<Tンって言うらしいデス」
「だから海斗ぉ! 誰のことだって言ってるのよ!」
「え? 昨日会ったじゃないデスか。あの転校生!」
由梨が強い口調で問うと、海斗はキョトンとした顔で答えた。
なるほど、昨日のヤツは水瀬天香と言うのか。
そういえば確かに名前を訊いてなかったな。
「へェ〜いつの間にか仲良くなったんだァ〜」
いや待てよ。
今朝俺が見てたとき名前なんて訊いてただろうか。
「怜旺さん怜旺さん。今日海斗は休み時間の度に天香ちゃんの元に会いに行ってたんだよ」
俺の疑問を察したのか、優が小声で伝えてくれた。
海斗の野郎、良い気に乗ってやがる。
軽く舌打ちしたそのとき、叩きつけられるような大音が扉の向こうから聞こえてきた。
この教室で大きな音を聞くのは何度目だろうか。
「ななな何だァ!?」
そしてもう一度同じ音が響いたと思ったら、次は勢いよく扉が開きドサドサと雪崩れ込んでくるヤツが二人。