行方不明の姫

□夜の獅琉高校
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「無事忘れ物を取り、そっと教室から出た瞬間……急に廊下の電気が次々と消えていった……」
 ここは地下にある薄暗いホウオー室。
 前方に座るのは、いつもよりトーンを下げた低い声の奇妙な女。
 深緑のフードに隠れる白髪が光によって不気味に照らされる。
「暗黙の廊下に取り残されたミスターレオは、急ぎ足で階段に向かった……」
 隣から、ゴクンと息を呑む音が聞こえてくる。
「時折背後を気にしながらやっとのことで階段に辿り着き、下ろうと足を踏み出そうとした途端……何か……何か足音のような音が突如聞こえてくる……!」
 上手く強弱をつけて語っている。
「よく聴くとその音源は下の階からだった……タン、タン、とゆっくり……」
 前の女は、つま先で地面を軽く叩き、タン、タンと静かに音を鳴らした。
「その音は次第に速くなり、だんだん音が大きくなっていく……まるで……こっちに近づいてくるような……」
 隣のヤツは冷や汗をかいて手が若干震えながらも、話に夢中になっている。

「危険を察知したミスターレオは、その場から離れ、反対側にある階段へと向かう。ここは二階、もし一階で音を出すソイツ≠ノ待ち伏せされたら困るため、二階にソイツが現れてから下ることにした」
 俺はこの長話を聴きながら、煙草を吸おうと思い手を伸ばすが暗くてよく見えない。
 仕方なくテーブルの上を手探りで確かめるが、なかなか見つからない。

「二階の廊下に足音が響いたとき、ミスターレオは全速力で反対側の階段を下りた……」
 謎の怪談話が終盤にさしかかった頃、一方俺は、いまだに煙草の箱を探していた。
 しかし見つからなく、次はテーブルの隅辺りを探す。
「足音も聞こえなくなりミスターレオは安堵し、下駄箱に向かおうとした途端、不意にミスターレオはあることに気づいた……」
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