行方不明の姫
□夜の獅琉高校
2ページ/10ページ
『何故ここは二階なんだ……? 俺は二階から階段を下りたはずなのに……』
何か小物が手に当たり、そのままコツンと下へ落としてしまった。
「ぎぃああああああ!!」
隣で震えていた青翔の叫びがホウオー室中に響き渡る。
俺の前に座るのは、懐中電灯を顔に照らしフードを被る天香。
「何!? なんかコトンって音がした!!」
「アホ! 俺が物を落としちまったんだよ」
青翔は小さく縮こまり、ラップ音や微かな音にも大きく反応する。
「ミスターレオは音を立てずに階段を下り――」
「もういい! てかミスターレオ≠チてなんだ、俺じゃねぇかよ!!」
話を続けようとする天香を制止した。
これ以上長い怪談に付き合ってられない。
「自分のいる階を間違えたやつが何を言う」
「仕方ねぇだろうが! しかもちゃっかり俺のセリフまで入れやがって」
俺達の会話を聴いて青ざめた顔をする青翔。
「え……コレ実話なの……?」
そのとき、天香が持っていた懐中電灯の光がフッと消えた。
ホウオー室は完全の闇に包まれる。
不気味な静寂に支配され、自然と体が強張った。
「れ、怜旺さん……天香ちゃん……誰か電気つけてきてよ……」
震えた声の青翔が、隣から聞こえてくる。
「暗くて何も見えねぇんだよ。天香、懐中電灯消すな」
「いや、私は消してない……勝手に消えた」
嘘つくな、と言おうとしたが、俺はある案が浮かび、テーブルの上を再び手探りする。
物がありすぎてガサガサと音が鳴り、その度に青翔は「うわァ!」と叫ぶ。
探していた物が見つかり、俺は即座にカチッとそれを押した。
「ギャアア!! カチッ!? 何の音!?」
俺が持っている物のおかげで、焦る青翔の顔がよく見える。
「ライターだ。これなら少し見える」
俺はソファから立ち上がり、電気ボタンの方へ向かいそれを押した。
ホウオー室が眩しいぐらい明るくなったので、ライターを消す。